サヘル

2019.09.02

アフリカのサハラ砂漠の南をサヘルと呼びます。
 
この地域には、西からモーリタニア、セネガル、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリア、カメルーン、チャドの八カ国が連なります。
 
今、ここでのテロ組織の活動が、一部の国を不安定化させています。
 
G7外相会合、G7サミットそしてTICAD7で、このサヘルをいかに安定させるかが議題に取り上げられています。
 
事の起こりは、アルジェリアで誕生したアルカイダ系のテロ組織でした。
 
このテロ組織がマリに進出し、2000年代に地元の部族と関係を築きました。
 
2011年にリビアのカダフィ政権が崩壊すると、カダフィの傭兵だったトゥアレグ族が武器とともにマリ北部に帰還し、地元で活動していた独立を目指すトゥアレグ族反政府組織と結びつき、2012年1月に武装蜂起しマリ北部を制圧しました。
 
その後、アンサール・アル・ディーンなどの過激主義組織が対立組織を駆逐し、短期間ですがマリ北部を支配下に置きました。
 
2013年1月、マリ政府の要請でフランスが介入、4月までに北部の主要都市を奪還。
 
高い貧困率や古くからの牧畜民と農耕民の対立に苦しむマリ中部において、牧畜民のフラニ族がアンサール・アル・ディーンと協力しながら、「マシナ大隊」を結成し、2015年頃から影響力を拡大し始めます。
 
また、2014年6月にシリア/イラクでISが「カリフ国」の成立を宣言すると、サヘルにも同調する勢力が台頭し、2015年5月、サハラーウィーに率いられた集団がISに忠誠を誓います。
 
2015年にはマリ政府と北部武装勢力との間で和平合意が結ばれるものの、その後も武装勢力が割拠し、新たな活動領域を求めて次第に南下し始めます。
 
2017年にはマリ北部でアンサール・アル・ディーン、マシナ大隊、アルカイダサハラ支部、ムラービトゥーンが合流し、「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」を結成。
 
2018年11月にはJNIMが西アフリカ各地のフラニ族にジハードを呼びかけます。
 
過激派の活動はマリ国内にとどまらず、隣接するブルキナファソへもJNIM等が侵入、ブルキナファソ由来の過激派や武装勢力と結びつき、2018年には北部・東部で急激に治安が悪化します。
 
また、ニジェール西部でもマリ・ブルキナファソから進出してきた武装勢力により、不安定化が始まります。
 
さらにギニア湾沿岸のベナン・トーゴ・ガーナ北部で伝統的にみられる農牧間の対立が、過激派に利用されるリスクが心配されます。
 
サヘル地域では、フランス軍がバルカンヌ作戦と称するテロ掃討作戦を展開し、軍事面では一定の成果を上げています。
 
国連もPKO部隊(MINUSA)を派遣し、これまでに死者123人、重傷者358人を出しながら、サヘル地域の安定化に尽力しています。
 
サヘル五カ国はG5サヘル合同部隊を展開し、資金不足などの困難に直面しながらも、連携のあり方を模索しながら、主に国境地帯の警備に取り組んでいます。
 
サヘルでは、辺境地域の開発の遅れ、国境管理の難しさといった課題に加え、異なるコミュニティー間の対立などが状況を悪化させ、そこに外国から流入した武器、高い失業率を背景にした若い戦闘員が加わって、問題を長期化させています。
 
この地域でみられる身代金目的の誘拐や密輸が、テロ組織の資金源となっている可能性も指摘されています。
 
国際的には、他の不安定な地域と比べると十分に高い関心が向けられてきたとは言えません。しかし、最近は欧州への移民の発生源また経由地となっており、ドイツやEUも関心を高めています。
 
フランス軍の作戦は強力ですが、万能ではなく、国連PKOは和平支援が中心で、テロ掃討はマンデートに含まれません。
 
G5サヘルは強いマンデートがあるものの資金不足などの困難に直面しているとの指摘もあります。
 
こうして既存の対立構造を利用したテロが国境を越えて広がり、テロ組織同士が連携し、点がつながり面へと広がりはじめ、暴力がさらに拡散する恐れが強くなっています。
 
TICAD7でも関係諸国、G7とEU、国際機関の参加の下、サヘル問題をテーマに特別会合を開催しました。
 
日本も、統治機構の強化やテロ対策への支援などに取り組んできました。
 
各国、関係機関と連携して、この取り組みを続けていきます。



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