日韓関係
2019.07.20
日韓両国政府は旧朝鮮半島出身労働者の問題をめぐり、難しい問題に直面しています。
旧朝鮮半島出身労働者の問題は、まさに国家間の約束を守るか否かの問題です。
大法院判決が出されたというのは韓国の国内事情でしかなく、それによって国家間の約束が破られるようなことになれば、安定した国際関係を築くことはできません。
日本と韓国は、1965年に14年にわたる困難な交渉をまとめ、当時の韓国の国家予算の規模をはるかに超える無償3億ドル、有償2億ドルの日本から韓国への経済協力を約束するとともに、両国及びその国民の間の財産・請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決」されたことを明文の規定で確認しました。
この交渉の中で韓国側が日本側に示したいわゆる八項目の「対日請求要綱」には、被徴用韓人の未収金や戦争による被徴用者の被害に対する補償も含まれています。
そして日韓請求権協定の合意議事録では、完全かつ最終的に解決された財産・請求権に当該八項目に属する請求が全て含まれており、いかなる主張もすることはできない旨明記されています。
さらに日韓請求権協定の交渉において、韓国は、被徴用者全般について補償を要求し、これが被徴用者の精神的、肉体的苦痛に対する補償を意味するとの説明を行いました。
これに対し、日本側から、個人に対する支払いを提案しましたが、韓国側は、日本に対し、国として請求した上で、韓国内での支払いは、国内措置として行う旨述べた経緯があります。
そして2005年8月に韓国政府は、請求権協定を通じて日本から無償資金協力として受け取った無償3億ドルには、「強制動員」に関する「苦痛を受けた歴史的被害」の補償のための資金も含まれており、韓国政府は、受領した無償資金のうちの相当金額を「強制動員」被害者の救済に使わなければならない道義的責任を持つ旨を公表しています。
この問題の本質は、以上のような経緯がありながら、国と国との約束、それも国交正常化の法的基盤となってきた約束が50年以上も経ってから韓国側から一方的に覆されてしまったことにあります。
韓国側には、国際法、国家間の関係の観点からこの問題にしっかり向き合っていただき、国際社会の一員としての責任ある対応を取るよう強く望みます。
こうした経緯を韓国国民の皆さんがご存知ないといけないので、韓国の新聞紙上で、書面インタビューという形で説明をしてきました。
同時に、日本としては、本件を国際法にのっとって解決するため、協定上定められた仲裁を求めました。韓国政府には協定上の義務に従い、仲裁に応じるよう求めましたが、韓国側はこれに応じず、更なる国際法違反の状況となりました。
こうした両国間の問題はありますが、今回の輸出管理の運用の見直しは、日本の輸出管理当局が安全保障の観点から実施しているものであり、旧朝鮮半島出身労働者問題とは全く関係がありません。
今回の見直し対象となっている物資・技術等は、軍用品への転用が可能な機微なものであり、各国当局はこれらの輸出を適切に管理する責任があります。
韓国の輸出管理制度が必ずしも十分でないにもかかわらず、2004年以来日本は韓国を「ホワイト国」と位置付けて手続を通常より簡素化してきました。
これは、当局間の対話が継続的に行われ、簡素化された手続での管理を適用するに足る日韓当局間の信頼関係が前提でした。
ところが、この3年間その対話が日本側が申し入れても開かれず、韓国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案も発生しました。
そのため、これ以上通常より簡素化された手続を維持することは困難と判断せざるを得ず、今回、韓国に対する手続について必要な見直しを行うことにしました。
いずれにせよ、今回の見直しは、あくまで輸出管理上の懸念に基づき行なっているものですので、あたかも旧朝鮮半島出身労働者問題に関する「対抗措置」であるかのような誤解をしないようにしていただきたいと思います。