おすすめの一冊
2019.02.09
久しぶりのおすすめの一冊です。
「旧約聖書を推理する 本当は誰が書いたのか」
リチャード フリードマン著
原作は「Who Wrote the Bible?」 by Richard Elliot Friedman
私が卒業したジョージタウン大学は、1789年にカトリックのイエズス会が創設した大学です。
学部を卒業するためには、神学を2科目履修しなければなりません。
「神の問題」または「聖書学入門」のどちらかが必修で、さらにもう一科目とらなければなりません。
私は「聖書学入門」をとり、旧約聖書を読むことになりました。
この授業の内容は、聖書はどうやって書かれたのかということでした。
旧約聖書の最初の5書をモーゼ五書(創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記)といいますが、これはモーゼが書いたということになっています。
でもモーゼの死の場面が書かれていたり、モーゼは最も謙虚な人物だと書かれていたり(最も謙虚な人物が自分のことを最も謙虚というでしょうか)、モーゼが書いたとはとても思えない部分があります。
また、例えば旧約聖書の創世記に出てくるノアの箱舟の部分を読むと、様々な矛盾があります。
箱舟に乗せた動物は何組のつがいだったのか、洪水は何日続いたのか等など。
旧約聖書には、神を「GOD(神)」と呼ぶ部分と「LORD(主)」と呼んでいるところがあり、ノアの箱舟の話の中にも神と主が両方出てきます。
授業では、ノアの箱舟の話を、神が出てくる段落と主がでてくる段落に分けてそれぞれを読んでみるということをやりました。
すると、それぞれが一つの物語として完結することがわかります。
つまり、聖書は「神」を主語とする文書と「主」を主語とする文書がもともとあって、それを一つの文書に編集したものなのです。
ということをわかりやすく、さらに誰が書いたのかというところまで解説してあるのがこの本です。
聖書も、ユダヤ教徒が歴史の波に翻弄されるなかで、さまざまな派閥の対立があり、今のようになったのだということも理解できるようになります。
日本語訳は、1989年に海青社から出ていますが、古本しかないかもしれません。
おそらくこれが原作の1987年版の日本語版ではないかと思います。原作は、その後、1997年版と2019年版が出ています。
旧約聖書とはどんな本なのかということを理解するにはおすすめの一冊です!