霞クラブ
2018.09.11
下記の内容を私のニュースレター八月号で出したところ、早速、霞クラブに国際部から2人配属してくれた社、霞クラブの政治部記者を国際部に出すことにした社がありました。
何事も発信してみることが大切です。
(ここから)
外務省の記者クラブのことを霞クラブとよびます。
テレビ局と新聞社、あわせて18社が霞クラブに所属し、それぞれ所属記者が外務省の取材をしています。
加盟社のなかには『外務大臣番』と称して、外務大臣を取材する特定の記者を置いているところもあります。
各社が海外に送り出している特派員は国際部(または外信部・外報部)に所属しているのですが、不思議なことに、外務省を取材する霞クラブに所属する記者は、ほぼ全員が国際部ではなく、政治部に所属しています。
一年間取材されて、いくつかの問題に気が付きました。
まず、霞クラブの記者は政治部に所属しているため、取材の対象が「外交」ではないということです。
河野太郎は総裁選挙に出馬するのだろうかに始まり、「政局」の質問がやたらと飛んできます。
そして「外交」に関しては、圧倒的に「北朝鮮」、それも「日朝首脳会談」はあるのかばかりです。
8月初めにシンガポールで行われたASEAN関連外相会合には、霞クラブから大勢の記者が同行してくれました。しかし、各社の関心は、いつ、どこで、どのように日朝の外相が「接触」するのかに集中します。
ASEANに関しては、日本の「自由で開かれたインド太平洋戦略」に対してASEANがどのような関与を示すのか、南シナ海に関してASEANがどのようなメッセージを出すのか、ラカイン州のイスラム教徒に関連して欧米がどのようなメッセージを出すのか、それに対して日本はどう対応するのか、ミャンマー政府は独立調査団をどのように設置するのか、日本はそれをどのように支援するのか、カンボジアの総選挙に関して日本はカンボジアに対してどのようにメッセージを出し、また、関与していくのか、日中及び日韓の外相会談で何が語られるのか、日イラン外相会談で日本は何を打ち出すのか、日米外相会談で対イラン禁輸の例外はどうなるのか,.....さまざまな外交的な課題がありました。
しかし、霞クラブの興味は日朝の外相の接触のほぼ一点に絞られていたといってもよいかもしれません。
もちろん各社のアジア各地の特派員もシンガポールに出張してきます。しかし、外務大臣を取材するのは霞クラブ、その他の会合を取材するのは特派員と担当が分かれているようです。
新聞で言えば、特派員の書く記事は国際面に載りますが、霞クラブが書く記事はほとんどが政治面です。国際的な動きではなく、政局記事の隣に外務大臣に関する記事が並びます。
霞クラブと特派員あるいは国際部の連携はどうなのでしょうか。(暗に連携がとれていないのではないかと言いたいわけですが)
霞クラブの中に数人(たぶん三人ぐらい)、「国際部の記者」がいます。正確には霞クラブに所属するために国際部から出向していたり、国際部から政治部に移ってきた記者です。
私は外務大臣に就任以来、外務省の職員に英語ができるようにしっかり勉強しろとはっぱをかけていますが、霞クラブの記者の中にも英語が得意でない記者がやはりいます。
最近、外相会談は、冒頭のマスコミオープンの場面から英語で始めることが多くなりました。また、共同記者会見や共同記者発表も英語でやることが多くなりました。
ポンペオ国務長官の訪朝後の日米韓外相会談後の記者会見は、国際的なメディアへの発信力を考えて、三人とも英語でやります。
英語ができないと取材に制約が出てきます。
外務大臣の海外出張日程は、なぜか必ずどこかの社にすっぱ抜かれ、比較的大きく報道されます。
もうすぐ公式に発表になる外務大臣の出張日程を、特ダネ扱いする意味があるとは思えません。
ではその海外出張そのものの報道はどうでしょうか。
日朝外相が接触かという話題のあったシンガポールには霞クラブから十数人が同行してくれましたが、コロンビアやメキシコの新政権との初めての会談やベネズエラ問題やTPPなどのテーマに事欠かなかった中南米出張には霞クラブからの同行は二社、インド太平洋軍や太平洋艦隊司令部や米軍兵士の遺骨の鑑定を行うDPAAやハワイ・カリフォルニアの日系人コミュニティを訪問し、ロサンゼルスのジャパンハウスのグランドオープニングに出席した米国出張には同行は一社だけ、あとの社は特派員さんお願いしますというのが現状です。
その結果、権威主義的政権により民主主義が失われ、経済が崩壊して百万人単位の非難民が隣国に流出する事態となっているベネズエラについて、ベネズエラの民主主義の回復を求めているペルーをはじめとする中南米のリマグループに同調する私の発言はほとんど日本国内で報道されませんでした。ところが、私の発言をベネズエラの外相が非難し始めると、そのことが一気に日本でも報道されました。多くの日本国民は、私の発言を知らなかったところにベネズエラの外相が私を非難していることを聞いて当惑されたと思います。
日本の外交力が試される時代になりましたが、日本の外交を国民の皆様にしっかりと知っていただく、理解していただくことが今までに増して必要になっています。
もちろん外務省も自らしっかりと情報発信をしていきますが、メディアの役割も重要です。
国際報道の一環として外務大臣、外務省を取材し、時には政局的な味付けが入るというのがあるべき姿ではないかなと思います。