国際連帯税
2018.07.31
冷戦が終わったとき、これで世界は平和の果実を味わうことができると思いました。
しかし、残念ながらそうはなりませんでした。
たとえば2017年末の世界中の難民、避難民の合計は、過去最高の6850万人にのぼりました。
そのうち2017年に移動を強いられることになった人の数は1620万人です。
難民の52%は18歳未満の子供です。
こうした難民を最も多く受け入れているのがトルコで350万人、ウガンダとパキスタンがそれぞれ140万人を、イランが98万人を受け入れています。
難民を受け入れている国の85%は開発途上国です。
レバノンは人口の6人に1人が、ヨルダンは14人に1人が受け入れた難民です。
両国とも経済が脆弱で、国民の失業率も高いのにもかかわらず、人道的に難民を受け入れています。
難民の流入により失業率は上がり、難民の子供を受け入れるために学校を午前、午後の二部制にしなければならなくなったり、水や燃料が足りなくなったりという問題を抱え込んでいますが、それでも国際的な支援を受けながら、頑張っています。
また、気候変動による自然災害は、世界中でこれからも増えていくでしょう。
必要な人道支援は、これからも増えていくことが容易に予想されます。
OECDの開発援助委員会(DAC)事務局によれば、2016年のDAC加盟29カ国のODAの合計は1,450億ドルです。
DAC全体では前年比10.2%伸びていますが、前年よりもODAを減らしている国が8か国もあります。
各国政府の財政状況を考えると、各国政府のODAによる人道支援や開発支援をこれから大きく増やすのは難しいと言わざるを得ません。
日本も現在の財政状況を見る限り、これから先、ODAを飛躍的に伸ばせる状況にはとてもありませんし、ODAを飛躍的に増やそうという国民的なコンセンサスはありません。
先進国に援助疲れが見えてきていると言ってもよいかもしれません。
そこで考えたいのが「国際連帯税」です。
国際連帯税には確固たる定義があるわけではありませんが、たとえば
2016年の1日当たりの外国為替取引額は世界全体で約6.5兆ドルになります。
もしこの為替取引に0.01%の国際連帯税をかければ、6.5億ドル、240日で計算すると1,560億ドル、DACのODA総額を超えます。
これを国際機関に直接納め、人道支援にあてることにしたらどうでしょうか。
もちろん、為替取引をはじめ金融取引に課税するという国際的なコンセンサスをつくるのは非常に難しいことですし、税率はどの程度が適当なのか、どこの国際機関に管理させるのか、どういう支援に充てることができるのかなど、詰めなければならないことはたくさんあります。
しかし、こうした議論を早く始める必要があると思います。
国際連帯税にはさまざまなアイデアがあります。
たとえば国際航空便の切符に課税している国も既にありますし、日本でも、航空便課税等を国際連帯税として議論しようという動きがあります。
しかし、これはその国の税収になっているもので、私の主張する国際連帯税とは根本的に違っています。
最終的には、一つの国の政府の税収になるものではなく、国際社会としてこの資金ニーズに直接対応する仕組みが国際連帯税だと思います。
日本のODAのありかたを議論する外務省の有識者会議も始めました。
人道支援、開発支援のありかたをしっかり見直していきたいと思います。