バンクーバー会議報告
2018.01.23
ミャンマー、UAEの後、バンクーバーでの北朝鮮に関する閣僚級会合に出席しました。
1月15日
08:00 アブダビ発
13:05 ロンドン・ヒースロー着
15:30 ロンドン・ヒースロー発
長い便なので、一番しわしわのスーツで搭乗。一番良いスーツをガーメントバッグにしわにならないように入れて。
ロンドンからボリス・ジョンソン英外相とサムエルセン デンマーク外相と同じ飛行機になりました。
ジョンソン外相は、桃ジュースがおいしかったことを、まだ言ってくれていました。
昼間の便でしたが、二人の先輩は、機中で爆睡。それを見て、私も映画を見るのはやめて眠りました。
16:55 バンクーバー着
飛行機が遅れ、ホテルで着替える暇もなく、コンベンションセンターへ。
18:00 日カナダ外相会談@バンクーバーコンベンションセンター
フリーランド加外相とは次の日の会議の進め方について及び今年のG7についての意見交換をしました。
19:15 カナダ及び米外相主催歓迎夕食会@サットンプレイスホテル
サットンプレイスホテル内のブールバードキッチンというレストランでフリーランド外相及びティラソン国務長官共催の歓迎夕食会。
外相及び各国の代表だけでロの字型のテーブルを囲み、私の右隣はソーライデ ノルウェー外相、左隣はティラソン国務長官、その向こうにフリーランド加外相、康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官。
ノルウェー外相は、連立政権の組み換えがあったため、翌日の朝一番に帰国しなければならなくなったそうで、残念そうでした。
マティス米国防長官とサージャン加国防大臣の二人も出席しました。
21:15 日米加韓外相による打ち合わせ
ブールバードキッチン内で、小さな丸いハイテーブルを4人で立って囲みながら翌日の打ち合わせをしました。まるでパブでテーブルを囲んでいるかのようなスタイルでした。
1月16日
07:00 打ち合わせ
07:30 日韓外相朝食会
韓国の康京和外交部長官と二人で朝食を食べながら、意見交換しました。
08:55 地元先住民による歓迎挨拶@以下、コンベンションセンター
カナダでは、こうした会議の開催に先立ち、先住民による歓迎が慣例になっているそうです。
09:00 セッション1 オープニングスピーチ
北朝鮮の核保有は認めないというのが、国際社会のコンセンサスです。
これは今回の会議に参加した国々だけでなく、中国、ロシアを含めて共有されています。
しかも北朝鮮はこれまでもミサイル技術を海外に輸出するなど、たびたび国際社会の平和と安定に反するような行為を繰り返してきました。
北朝鮮がテロリストにミサイルや核を売り渡す可能性があることも考慮しなければならないことを、今回の会議で各国も指摘しています。
では、どうやって北朝鮮に核を放棄させるか。
日本国内では、北朝鮮とすぐに対話を開始しろという意見があります。しかし、それは現実的ではありません。
例えばイエメンやシリアのような内戦状況で、対立する両派に対話を求めるのは価値があります。双方に何らかの妥協を求め、停戦を合意することは可能でしょう。
しかし、現在の北朝鮮にはあてはまりません。
度重なる国連決議を無視して核開発を強行した国が、そのことで対価を得るべきではないのはもちろんです。
さらに仮に国際社会が北朝鮮と対話を始めたとして、その間、北朝鮮は核、ミサイルの開発を続けるでしょう。北朝鮮は、いくらでも対話を続け、その間に好きなだけ核開発を続けることができます。
対話をするふりをして北朝鮮はいくらでも時間を稼ぐことができます。
だから国際社会は、まず、北朝鮮が核とミサイルを放棄するという意思表示をし、それに向けて具体的な行動をとることが対話を始める前提条件だといっているのです。
では、どうやって北朝鮮に核とミサイルを放棄させるのか。
一つには、北朝鮮の現在の体制を尊重するという約束です。
北朝鮮は、アメリカからの攻撃を防ぐために核を開発したと再三、言い続けています。
北朝鮮が核を放棄してもアメリカが北朝鮮を攻撃することはないという約束をアメリカがして、それを国際社会が保証することが必要でしょう。
だからこれまでティラソン国務長官が「4つのノー」、つまり、北朝鮮の体制転換を求めない、金正恩政権の崩壊を目指さない、南北統一を急がない、38度線より北にアメリカ軍が侵攻しない、ということに繰り返し言及しています。
しかし、北朝鮮はそれに応じる気配がありません。
そこで、国際社会は一致して、安保理決議による制裁という圧力を北朝鮮にかけることで、北朝鮮に核とミサイルを放棄させ、拉致問題を解決させようとしています。
国際社会が一致して北朝鮮に対する制裁を続けることによって、北朝鮮の体制に、このまま現在の政策を続けても、明るい未来が決して来ないということを認識させ、金正恩が政策転換することを決めれば、国際社会も「4つのノー」に基づいた保証を北朝鮮に与え、それだけでなく、核の放棄がきちんと進めば経済的な支援を与える議論も始められる可能性があります。
今回の会議のすべての参加国がこうした方向性に合意をしています。
中国やロシアも国連の安保理決議に賛成し、経済制裁を実施しています。さらに中国は、追加的な制裁も実施しています。
メディアが時々、どこの国の政府が北朝鮮と対話に言及などと報道しますが、実際は、こうした国際社会の基本的な方向性と違うわけではありません。
そんな中で、韓国が北朝鮮とオリンピックに関する南北対話を始めました。
これについても対話はオリンピックに限られているというのが韓国を含めた国際社会のコンセンサスです。
韓国と北朝鮮が対話を始めたからといって、北朝鮮の核放棄につながりません。ですから、南北対話の間も制裁を緩めるわけにはいきません。
メディアにもオープンにされて行われてオープニングセッションでは、この会議を共催したアメリカ、カナダの国務長官、外相に続いて韓国、日本の外相がスピーチをして、英国のジョンソン外相が続きました。
ここでメディアが退場して、セッション2に続きます。
09:40 セッション2 現状報告
セッション1でスピーチをした上記5か国以外の参加国から、現状認識について報告が行われました。
ここで、すべての参加国の認識が一致していることが確認されました。
10:30 コーヒーブレーク
国際会議では、コーヒーブレークでの会話が極めて大事です。
二か国間の懸案事項があれば、こうしたコーヒーブレークで外相同士、打ち合わせをすることもしばしばあります。
今回の参加国の中では、参加した外相のうち、ギリシャ、ノルウェー以外の外相とは、すでに二国間会談の経験がありますし、さまざまな会議で同席したこともあり、すっかり顔なじみです。そうした個人的な関係があって初めて突っ込んだ話し合いに繋がるということを実感しました。
11:05 セッション3 制裁
国連安保理決議を国連加盟国すべてが完全に履行すれば、北朝鮮の輸出による外貨収入をすべて断つことができます。
また、北朝鮮の石油精製品の輸入は2017年夏時点と比べて89%減少することになり、北朝鮮から外国に出ている労働者も24か月以内に送還しなければなりません。
しかし、北朝鮮も制裁を巧妙に免れようとしています。
石炭の輸出や石油精製品等の輸入を「瀬取り」と言われる海上での船から船への移し替えで逃れようという動きがキャッチされ、すでに阻止され始めています。
いかに制裁をしっかりと履行するかということが重要です。
セッション3では、経済制裁に関する専門家を会議に招いて、具体的な制裁強化の方法を議論しました。
国連は、加盟国政府に、制裁の履行状況に関する報告書の提出を求めていますが、国によっては、報告書を提出していないところもあります。
経済的な取引が元々ないからということもありますが、報告書の書式がわからないとか、提出を求められていることを知らないということもあります。
また、途上国では船や取引が北朝鮮の巧妙な手口に知らずに使われていることもあり、技術的な支援が必要な場合もあります。
さらに、国連安保理決議以上の制裁も必要です。
安保理決議を採択するためには、中国、ロシアが拒否権を使わないことが必要になるため、中国やロシアが望まない制裁は安保理決議に盛り込めません。
しかし、北朝鮮に対して、現在の政策を続けている限り明るい未来はないということを認識させるためには、国際社会から孤立しているということを強く認識させなければなりません。
そのために、日米韓、EUをはじめ多くの国は、安保理決議以上の制裁を始めています。
例えば北朝鮮からの労働者は24か月以内に送還することになっていますが、EUや中東諸国の中にはただちに北朝鮮労働者の送還を始めたところがあります。
また、北朝鮮の大使館の中には、大使館のステータスを利用して、酒などを「密輸」して、大使館で販売したり、大使館を利用したパーティを開催して売り上げを上げているといった指摘もあります。
そのため、各国は北朝鮮からの大使を送り返したり、新たな大使の赴任を認めなかったりということを始めています。
その結果、多くの国は北朝鮮とは経済的な取引もなく、北朝鮮の労働者もいない、大使をはじめ外交団もいないということになっています。
そうなるとさらに圧力を高めるためには外交関係を断絶するということになります。
バンクーバー会議の直前に、ヨルダンから北朝鮮と断交することを閣議で決定したとの連絡が入りました。日本のオープニングスピーチで、それを発表してくれて構わないということでしたので、私のオープニングスピーチでそれについて触れ、各国に同調してもらうように呼びかけました。
12:10 セッション4 不拡散
北朝鮮が核放棄に向けて一歩を踏み出した場合に、そのための査察が必要になります。
この会議ではIAEAの専門家を招いて、必要となる査察のありかた、体制についての議論を行いました。
13:10 写真撮影
この会議、部屋の温度があまりにも低く、凍死寸前でした!
カナダはこうなのかと思っていましたが、あまりに寒いので、隣に座ったフリーランド外相に、寒すぎないと聞いたら、私も震えていた。えっ、カナダ温度じゃないのと聞いたら、とんでもない、寒すぎると返ってきました。
韓国の康京和外交部長官が、平昌五輪の大きなマフラーを参加者に配っていて、みんな、それにくるまっていました。午後は、少し部屋の温度が上がりました。
13:45 昼食会
昼食会の前にボリス・ジョンソン英外相が、大きな声で、「タロー、ミャンマーの話を聞かせてくれ」。
あっという間に、各国の外務大臣に取り囲まれました。
この出張の最初にミャンマーのラカイン州北部に外国の閣僚として初めて足を運びました。そのことは世界中に広まっていたようです。
ラカイン州の様子、国境の避難民の帰還準備の様子などについて、説明をしました。
「国軍が連れていってくれたのか」「国軍のヘリに乗ったのか」「アウン・サン・スー・チーは何と言っていたか」....矢継ぎ早の質問でした。
15:00 セッション5 次のステップ
16:00 ブレーク
16:45 クロージング 議長声明の採択
北朝鮮の核保有は認めない、圧力を高め維持するために制裁の完全な履行に国際社会で努力するといった基本方針が確認されました。
17:15 日ギリシャ外相会談
この会議に参加したギリシャの外相と会談をしました。日ギリシャ外相会談は、なんと21年ぶり!!
その間、外相の相互訪問がなかっただけでなく、国連総会などの場面でも外相会談がなかったというのは驚きです。
早速、二国間関係の強化に向けて、さまざまな取り組みを始めることで合意しました。
18:25 日米韓外相会合
日米韓の三カ国の外相会合を行い、制裁を強化するために、途上国への様々な支援を三カ国が中心となって行っていくことを確認しました。
19:00 日米外相夕食会@ジョージアローズウッドホテル
ティラソン国務長官主催の夕食会。さまざまな課題についても話しましたが、個人的な話題で盛り上がりました。
21:30 ぶら下がり記者会見
バンクーバーでは、時差の関係もあり、記者団、特に新聞は朝刊、夕刊の締め切りに追われ、寝る間もなくという感じでした。
1月17日
08:00 同行記者団との朝食会
寝不足で朝起きられない記者も。
09:30 日系人関係者との意見交換
バンクーバー周辺には日系人も多く、コミュニティのリーダー的な存在の方に集まっていただきました。
アメリカ同様、カナダでも戦時中には強制収容所に送られた日系人も多く、また、各地の収容所を転々とした人も多くいました。
日系人の90%近くが日系人以外と結婚しているという統計もあり、Nikkeiという呼び方の方がJapanese Canadianという呼び方よりも好まれているようです。
13:40 バンクーバー発
1月18日
16:35 成田着
成田空港から首相官邸に直行。
17:50 NSC4大臣会合+ターンブル豪首相
来日中のターンブル豪首相が安全保障会議に参加されました。
18:30 日豪首脳会談に同席
19:00 総理主催歓迎夕食会
21:00前に宿舎着。寝ました。