英訳が..ありません
2017.05.24
私が、小泉政権の法務副大臣を務めていたとき、頭を悩ませたのが日本の法律の英訳でした。
法律の英訳を進めるどころか、毎年、新しく制定される法律の数だけ英訳が進まず、英訳が必要な法律の数は年々増えていきます。
この数日のニュースで、ジョセフ・カンナタチという国連の「特別報告者」なる人物が、組織犯罪処罰法改正案に対して、プライバシーに関する懸念などを表明したという報道がありました。
おやおや今回の組織犯罪処罰法改正案は英訳が早いなと感心しながら法務省に訳文をくださいと連絡すると、「ありません」。
いつもながらに法案の英訳作業はまだ着手もされておらず。
それじゃあこのカンナタチさんにどうやって法案の説明をしたのかと尋ねると、政府からまだ、説明をしていません。
法案も読まず、政府からの説明を聞かずにこの特別報告者はどうやって法案についてのコメントを出せるのかと法務省、外務省に尋ねても??
かつて日本の女子生徒の13%が援助交際に関わっていると述べたデービッド・ケイという国連特別報告者がいたように、国連特別報告者は、別に国連の立場を代表しているわけではなく、個人の意見を述べているに過ぎませんが、それにしても今回のずさんな対応には驚きます。
しかし、本来、英訳が国会審議と並行して行われればこうした問題はないわけで、知恵の出しどころです。
私が提案しているのは、まず、基本的なフレーズを中心に法律の英訳のための辞書を作成したうえで、法案の英訳にスポンサーを募集し、冠英訳とすること。
例えば銀行法の英訳にシティバンクが協力してくれたら、英訳後何年間は英訳を「CitiBank銀行法」、アフラックが保険法の英訳に協力してくれたら「アフラック保険法」。
もちろん、霞が関が英訳には最終的に責任を持ちますが、日英ができる企業の弁護士をお借りして、基礎的な作業を進められれば英訳もスピードアップできます。
国際化の中で、法律の英訳は深刻な問題です。