収支相償
2016.07.21
我が国の公益法人における会計は、公益目的事業、収益事業、管理部門(法人会計)の三つに分けられます。
そのうちの公益目的事業会計に関して、「収支相償」というルールがあります。
公益目的事業は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とするものです。
公益目的事業であれば、税法上の収益事業であっても法人税はかかりません。
だから公益目的事業を行うためには制約があります。
その一つが「収支相償」です。
収支相償とは、公益目的事業を行うために必要な費用を大幅に超える収入を、長期間、得続けてはいけないということです。
それだけの収入があるならば、その公益法人は、公益事業を拡大し、受益者の範囲を広げるべきだと考えられています。
もちろん公益法人は、組織が継続する(ゴーイングコンサーン)ことを前提としていますので、収入が増減しても資金繰りが維持できるように考えなければなりません。
そのためにはある程度の内部留保が必要です。
公益法人が、一年分の費用と同程度までの内部留保を持つことは認められています。
その上で公益目的事業の収支において、収入が費用を上回る時、公益事業を拡大するか、黒字分を将来の公益事業のために積み立てるか、いずれかが求められます。
たとえば奨学金の対象者を増やす、研究助成金を増額するといったことは前者にあたり、老朽化した事務所の建物を建て替えるための資金を積み立てるなどは後者にあたります。
公益法人は収支相償というルールがあるので、単年度で収支を均衡させなければならないという誤解が一部で広まり、剰余金で必要ない機材を買ったりして無駄に使ってしまった公益法人もあると聞いています。
あるいは黒字で積み立てた分は二年で使わなければならないという都市伝説も流布されてきました。
また、行政庁(内閣府と都道府県)の中には、そのような指導をしてきたものがあったようです。
公益法人が、その公益目的をきちんと果たしていくためには、多少の収支の変動で存続が危うくなったりしないことが大切です。
そのためには「収支相償」というルールがおかしなように解釈されることがないようにすることが大切です。
また、行政庁ごとにルールの解釈が違ったり、人が変わるとルールの解釈が変わるなどということがあってはなりません。
また、行政庁が、公益法人の実際の活動を理解せず、独りよがりの指導をすることなどもってのほかです。
もし、内閣府や都道府県でそのようなおかしな指導が行われていたら、ぜひ、ご一報ください。
http://www.taro.org/%e6%b2%b3%e9%87%8e%e5%a4%aa%e9%83%8e%e3%81%ab%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%81%99%e3%82%8b
公益法人が、求められている公益目的活動をきちんと行うことができるように、ルールの適正化、明確化をしっかりと行います。