肥育ホルモンとラクトパミン

2016.03.31

アメリカやオーストラリアで牛や豚を育てるときに使われる肥育ホルモンやラクトパミンという薬剤が、国会審議で取り上げられたり、週刊誌の記事に取り上げられたりしています。

肥育ホルモンやラクトパミンは、食品添加物とは違い、牛や豚が生きているうちに与えられるもので、尿などで排出されて動物の体内にはほとんど残りません。

また、肥育ホルモンやラクトパミンには科学的な見地から定められた残留基準があり、輸入された牛肉や豚肉で肥育ホルモンやラクトパミンがこうした残留基準を超えたことはなく、結論から言えば、国内に輸入される肉に関しては安全面からの問題は全くありません。

肥育ホルモンは、性ホルモンで、元々動物の体内に存在するものを製剤化した天然型と、化学的に合成した合成型があります。

天然型のホルモンは、日本やアメリカ、EUなどで繁殖障害の治療などに用いられていますが、アメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど主要な牛肉輸出国では、天然型と合成型のホルモンが肉用牛の肥育をはやめるためにも使用されています。

日本では、こうした肥育目的として承認された肥育ホルモンがないため、こうした目的で肥育ホルモンを使用することはできません。また、肥育ホルモンを与えると赤身の肉の割合が増えるため、サシを求める日本の生産者には肥育ホルモンを投与するニーズもそもそもないようです。

また、ラクトパミン(正確には「塩酸ラクトパミン」)は、「β作動薬」と呼ばれる飼料添加物で、やはり牛や豚の体重を増やしたり、赤身の肉の割合を増やしたりという効果もあります。

ラクトパミンはアメリカやオーストラリアなど約20か国で使用されていますが、EUではβ作動薬を成長促進の目的で使用することを認めておらず、日本国内ではラクトパミンは飼料添加物として指定されていないため、国内では使用できません。

β作動薬のなかにはクレンブテロールとよばれる気管支拡張作用のある薬があり、日本やアメリカ、EUでは家畜の治療用に使われていますが、成長促進の目的ではこの薬を使うことは認められていません。

現在、日本では肥育ホルモン剤もラクトパミンも食品表示法上、表示する義務はありません。

一つには、肥育ホルモンもラクトパミンも、コーデックス委員会といわれる国際機関が設定した国際的な基準を踏まえ、我が国の薬事・食品衛生審議会が決めた食品中の残留基準の範囲内であれば、食品の安全性は確保されているからです。

SPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)やTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)は、表示について科学的な証拠が必要であることや、必要である以上に貿易を制限するものではいけないと定めていて、日本が表示を求めようとするならば、こうした表示が必要であることを示さなくてはいけません。

二つ目には、肥育ホルモンやラクトパミンは、食品添加物と違って、牛や豚が生きている時に与えられるものなので、与えるのを止めれば、比較的短時間に体内から尿や糞で排出されてしまいます。

例えばラクトパミンを牛に8日間与えても、その後投与をやめると、4日間で93%、10日間で97%が体外に排出されます。そのため、肉などに肥育ホルモンやラクトパミンが残っていないことが多く、使用されたかどうかを検証することが非常に難しいのが現実だからです。

アメリカやオーストラリアは肥育ホルモン剤を肉用牛に使っていますが、日本に輸入される牛肉については水際でその残留についてモニタリング検査されています。

平成18年4月1日から平成26年3月31日の間にアメリカ産牛肉については1663件、オーストラリア産牛肉については1120件、その他産256件のモニタリングが行われましたが、残留基準を超えたものは1件もありませんでした。

また、過去10年について厚生労働省で確認した結果、ラクトパミンなどのβ作動薬による食中毒は国内では報告がなく、消費者庁設置(2009年9月)以来、消費者からの健康被害の報告もありません。

EUでは、肥育ホルモンやラクトパミンは、データ不足で最終的な健康評価が行えないなどとして、両剤を使用した牛肉や豚肉の輸入を禁止しています。もっとも域内の農業を保護するために、アメリカなどからの牛肉の輸入を規制しようというのが本音のようです。

1988年にEUは、肥育ホルモンを成長促進の目的で牛に使用することをEU指令で禁止し、1989年に肥育ホルモンを使用した牛肉の輸入を禁止しました。

1996年にアメリカはEUの輸入禁止措置をWTOに提訴し、1997年にEUの措置は科学的根拠に基づいていないとWTOパネルが判断し、EUは敗訴。

結局、2009年にEUがアメリカ等に対して肥育ホルモンを使っていない牛肉の無関税割当枠4万5千トン分を段階的に増加する代わりにアメリカはEUに対する対抗関税を段階的に撤廃することで覚書が締結されました。

我が国では、食品衛生法の改正により、平成18年5月にいわゆるポジティブリスト制度が導入され、すべての農薬や動物医薬品等に残留基準を設定し、それを超えた残留物がある場合は販売が禁止されることになりました。

酢酸メレンゲステロールとよばれる合成型肥育ホルモンに関しては、米国の基準値を参照した暫定基準が設定されていますが、2016年内には食品安全委員会によって食品健康影響評価を行い、その後、厚生労働省によって残留基準値の見直しが行われる見込みです。

消費者庁は、これからも関係省庁と連携して、食品の安全・安心をしっかりと監視して参ります



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