サウスカロライナとルール40(b)

2016.02.23

アメリカのサウスカロライナ州で、2月20日、共和党の予備選挙が行われ、ドナルド・トランプ候補が勝利しました。

これまでのアイオワ州の党員集会、ニューハンプシャー州の予備選挙と違って、サウスカロライナ州の予備選挙はある種の「総取り」方式です。

アイオワとニューハンプシャーは、各候補の得票に応じて、州に割り当てられた代議員の数を各候補に割り振っていく比例代表方式でしたし、2月23日のネバダ州の党員集会も比例代表方式です。

(ネバダ州は30名の代議員が比例配分され、得票率約3.33%に一人の割合で代議員が割り当てられます。)

しかし、サウスカロライナは、州に割り当てられた50の代議員を州全体でトップの候補者に29名、サウスカロライナの7つの連邦下院議員選挙区ごとにトップになった候補者に、一選挙区ごとに3名ずつの代議員を割り当てます。

トランプ候補は、州全体でトップになり、29名の代議員をまず獲得し、最終的にサウスカロライナの7つの連邦下院議員選挙区のすべてで得票がトップになったので、さらに21名を上乗せして、50名の代議員を総取りすることになりました。

トランプ候補の得票率は32.5%、2位のルビオ候補の得票率は22.5%、3位のクルーズ候補は22.3%でしたが、獲得代議員の数はトランプ候補50に対し、ルビオ・クルーズ両候補は0に終わりました。

結果これまでの代議員の合計はトランプ67、クルーズ11、ルビオ10となりました。

サウスカロライナ州の結果は、もう一つ意味を持っています。

共和党は、2012年の党大会前までは、共和党の大統領候補に指名されるためには、少なくとも5つの州で、予備選挙又は党員集会で獲得した代議員の数が第一位でなければならないと定めていました。

ところが2012年の党大会直前に、ほぼ指名を確実にしていたミット・ロムニー候補の陣営が、過激なリバタリアンとして知られているロン・ポール候補に党大会をかき回されたくないと、ルール変更を画策し、実現させました。

その結果、共和党の大統領候補になるためには、少なくとも8つの州で過半数の代議員を獲得しなければならないという極めて高いハードルが課せられることになりました。

(このルールは「共和党ルール40(b)」と呼ばれます)

これは、2012年の党大会を穏便に終わらせると同時に、2016年の党大会で、ミット・ロムニー大統領(!)が、主だった対抗馬なしに再び共和党候補として指名されるようにという意図もあったそうです。

残念ながらロムニー候補が2012年に本選挙で敗北し、後者は意味がなくなってしまいましたが。

しかし、この結果、2016年に共和党の大統領候補になるためには、8つの州で過半数の代議員を得なければならなくなりました。

そのためには、得票数に応じて代議員が割り振られる比例配分方式の州ではなかなか過半数の代議員を獲得することは難しいため、他の候補よりも一票でも多く得票したら代議員を総取りできる州で勝つことが必要になります。

2016年の共和党のルールでは、サウスカロライナを除いて、3月15日より前に行われる予備選挙・党員集会では総取り方式は禁じられています。

その結果、総取り方式の州は、サウスカロライナと3月15日に行われるフロリダをはじめ19州しかありません。

サウスカロライナ 州全体プラス下院選挙区ごとに総取り
フロリダ 総取り
イリノイ 州全体分のみ総取り
ミズーリ もし50%以上の票を獲得したら総取り
北マリアナ諸島 総取り
オハイオ 総取り
バージン諸島 総取り
アリゾナ 総取り
ウィスコンシン 州全体プラス下院選挙区ごとに総取り
コネチカット もし50%以上の票を獲得したら総取り
デラウェア 総取り
ペンシルバニア 州全体分のみ総取り
メリーランド 総取り
インディアナ 州全体プラス下院選挙区ごとに総取り
ネブラスカ 総取り
カリフォルニア 州全体プラス下院選挙区ごとに総取り
モンタナ 総取り
ニュージャージー 総取り
サウスダコタ 総取り

サウスカロライナの後、確実にある候補者が過半数の代議員を獲得できるのは11州しかありません。その他の州の場合は、票のばらつきによって総取りにならず、過半数の代議員をどの候補者も獲得できない可能性があります。

これからの予備選挙・党員集会が3人の候補の混戦になると、場合によっては、どの候補者も必要とされる8つの州での過半数の代議員をとれない可能性があります!

共和党の幹部の一人に、もしそうなったらどうするのと尋ねてみると、彼はこともなげに、党大会の前にルールを変えればいいのさと答えました。

党大会の前にはルール委員会が開催され、必要ならば党大会のルールを変更することができます。

2012年の党大会の前にもルール変更をしているわけですから今回もルール変更をすればいいというわけです。

しかし、その時には複数の候補者がつばぜり合いをしているわけですから、ルールを変えるといってもきっと大変でしょう。

これからの共和党の指名競争のプロセスがどうなるのか、目が離せない状況が続きます。



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