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「中東ダボス会議」に参加して
2015.05.29
ヨルダンの死海で開催されたWorld Economic Forum on the Middle East and North Africa(「中東ダボス会議」)に出席してまいりました。
死海のほとりの死海リゾートとよばれるホテル群をヨルダン軍が封鎖して厳重な警備が行われるなかで開催されました。
アンマンの空港から専用のバスに乗り、死海リゾートの一番端のホテルで身分確認が行われ、IDカードが発行されます。参加者はこのIDカードを常に首から下げていることが求められ、会場となったコンベンションセンターではIDカードに添付されたコンピュータチップで出入りが管理されます。
この会議のホストであるヨルダンのアブドラ国王もIDカードを首からかけておられる徹底ぶりでした。
今回の会議には、アブドラ国王ご夫妻、エジプトのエルシーシ大統領、パレスチナのアッバース大統領、ヨルダンのアンスール首相、イスラエルのペレス元首相、イラクのアルジャブリ国会議長、ゴードン・ブラウン元英国首相、ロシアのネベンザ外務副大臣等々、閣僚クラスの参加者も多数いました。
この会議での話題の中心はIS(中東の人たちはダーイッシュと呼びます)でした。特に、誰がどうやってISに資金を提供しているのかがコーヒーブレークや夕食会の話題の中心でした。
ヨルダンとイラクに視点を持つキャピタルバンクの会長の話では、ISがモスルを落とした時に銀行の支店を閉鎖したところ、ISから支店を開けるように命令されたそうです。
ISからは、キリスト教徒と女性を支店で働かせるな、利息を取ったり支払ったりするな、預金の払い出しを行えという指示があったそうです。
ISの支配下にある地域に現金を届けることができないため、支店にある現金が底をついた時点で支店を閉鎖することになるが、おそらくあと一週間でそうなるだろうとのことでした。
キャピタルバンクの会長によれば、ISは支配下にある民間銀行の現金を差し押さえをすることなく、イラク中央銀行の支店にある現金だけを差し押さえているようです。
そんな金融の関係者でもISの資金の流れは全く分からないと言います。
ISは毎月、2億ドル近い収入を得ているという会議の参加者もいました。
ヨルダンからイラクに行くトラックは、ISの支配地に入る際に数百ドルの通行料を支払っているそうですが、その程度ではISの財政をまかなうことは到底できないと思われます。
中東ではよく陰謀説がはやりますが、この会議に参加している人の中にもISに資金提供しているのはイランだ、その証拠にISはスンニ派としか戦っていないではないか、いや、イスラエルだ、その証拠にアラブ各国がISのおかげで混乱しているではないかなど、様々な声がありました。
この会議に参加すればISについていろいろなことがわかるかと期待していましたが、アラブ各国の政府、国際機関、報道機関などの関係者ですら、ISに誰が資金を提供しているのか、武器がどこから来ているのか、ISの支配下にある地域の行政を行う人間がどこから来ているのか、前線への補給がどうおこなわれているのかといったことが明確には分からないというのが現実でした。
議論の中では、現在の中東の状況は、ハプスブルグ帝国が崩壊した後のヨーロッパと似ているという分析がありました。
ハプスブルグ帝国後、少数民族を多数抱えた新たな国が欧州に誕生し、それが2つの大戦を経て枠組みを変えていきました。
現在の中東もオスマントルコ帝国が崩壊し、それぞれの国に多数の少数民族を抱える状況ができただけでなく、そうした民族が絶大なる権力を握っている状況への反発が起きていて、これは枠組みの変更につながっていくのだという解説でした。
シリアのアラウイー派、イラクのスンニー派、レバノンのマロン派等が人口に比べて大きな権力を保持し、それが崩れつつあるということでした。
ジョージタウン大学の同窓であるヨルダンのアブドラ国王陛下には今回もお時間をいただき、拝謁いたしました。
国王陛下からは、日本とヨルダンの協力関係をさらに前進させていきたいとのお話がありました。
もし、中東地域でテロや内紛があり、日本人が危機に陥るようなことがあれば、軍や情報機関、対テロ特殊部隊等のヨルダン政府のリソースを使って救出にあたることも考えているというお考えも聞かせていただきました。
会議のオフィシャルなプログラムとは別に、閣僚クラスによる昼食会やクローズドの会議が開かれています。いくつかのそうした会にご招待をいただきました。そうした会合の内容には触れるわけにはいきませんが、大変意義深いものでした。
中東とはこれからもしっかりと向き合っていきたいと思います。