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時代遅れの「ベースロード電源」
2015.04.04
エイプリルフールも終わったはずの4月2日、自民党本部で原子力政策・需給問題等調査会が開かれた。
その場で、「エネルギーミックスに関する提言(案)」なるものが提案された。
内容は、ほとんどどうでもよいものだが、その中に1行、エネ庁や電力業界をはじめとする原子力ムラが、「自民党からお墨付きをもらった」と言いたいがための文言が忍ばせてあった。
「安価で安定的に供給されるベースロード電源の比率を国際的に遜色ない水準となるよう6割程度を確保すること」というものがそれだ。
しかも、朝8時から始まったこの会議に初めて提案されたものであるこの提言の内容が、8時前にNHKであたかも既定事実のように報じられていた。
会議の席上、多数の議員から、この「6割」という数字を落とすべきという意見が出された。
しかし、この提言からこの6という数字を落とせば、まったく意味のない提言になるわけで、原子力ムラに属する議員は必死に6を守ろうとする。
で、結局、「ベースロード電源について、我が国において国際的に遜色のない水準を確保すること」と修正された。
が、そのベースロード電源というものが欧米では現状で6割という水準にあるが減少し続けているという説明を入れたいということになり、
さらにその説明を前後させて(!)、
「欧米の多くの国で漸減傾向にあるが現状6割以上となっている」という修飾文が「ベースロード電源」につけられることになった。
「欧米の多くの国で、漸減傾向にあるが現状6割以上となっているベースロード電源の比率について、我が国において国際的に遜色のない水準を確保すること。」
そのため、マスコミが、主語述語修飾文を取り違えて意味するところを間違えないように、文章に強調のためのアンダーラインを入れ(『』ではさんだ部分)、
「欧米の多くの国で、漸減傾向にあるが現状6割以上となっている『ベースロード電源の比率について、我が国において国際的に遜色のない水準を確保する』こと。」
4月3日の朝に、新聞各紙が早合点して、「自民党はベースロード電源を6割に」と見出しを付けたが、おそらくそれは最初に配られた案を見たものだろう。
欧州もアメリカも、現状ではエネ庁のいう「ベースロード電源」は6割あるが、どんどんそれは減少し、2030年には50%を切ることになり、2040年には40%程度に低下する。
我が国もそれに合わせていこうというのが自民党の提言だ。
さらに、エネ庁は、ベースロードとは、石炭、原子力、水力、地熱を指すのだと言っているが、自民党内では天然ガスも当然にここでいうベースロードに入れるべきだという根強い主張があり、天然ガスの取り扱いについては今後、協議していくということになった。
こうしたことを理解したうえで、自民党の提言を読んでほしい。
これまで日本のエネルギー基本計画は、やたらと原子力発電の想定を多く見込んでは、未達に終わり、結果的に石油火力や石炭火力を多く使って、燃料費の高騰や温暖化ガスの排出量の増加を招いてきた。
今回も、エネ庁は、福島第二原発まで稼働させる前提で議論している。まるで福島の事故などなかったかのようだ。
そもそも「ベースロード電源」という考え方そのものが20世紀型の時代遅れの考えだ。
最近では、太陽光発電や風力発電、原子力発電のように需要に応じて出力を変えられない電源と需要に合わせて出力を変えられる電源に分けて考えるのが世界の潮流だ。
そう考えると、ベースロードというのは、太陽光発電、風力発電や原子力発電のようなものをさし、それに対して出力を変えられる調整電源というものがあると言うべきだ。
原子力ムラの呪縛で、我が国のエネルギー政策は、諸外国と比べて後れを取ることになりかねない。