TPPとTPA

2012.01.12

アメリカでは、この1月13日まで日本のTPP参加に対するパブリックコメントを募集している。

また、同時並行的に、アメリカ政府による様々な業界や企業からのヒアリングも行われている。その中では、やはり自動車業界からの反対が強いようだ。

しかし、その理由のなかに、日本は未だに非関税障壁を設けているとか、為替操作をしている等というものもあるらしい。日本が、自ら為替操作をすることができて、その結果、円高にして、それでアメリカの自動車業界がそれをけしからんと息巻くというのは、かなり滑稽だ。

アメリカ政府は、日本政府がTPPに参加するという方針を固め、同時に既にTPPに参加表明している国々が日本の交渉参加を受け入れるという方針を明らかにして、アメリカ政府も日本とのTPP交渉が始められるとなった段階で、議会に対して通知を行う。そして、通知後90日が経過すれば、正式に日本とのTPP交渉を開始することができる。

やや一部に誤解があるのは、政府からのTPP交渉開始の通知を、議会は採決する必要はない。もちろん、拘束力のない決議を議会がすることはできるが、現時点では、予想されていない。

こうした手続がとられるのは、TPA(Trade Promotion Authority:貿易促進権限)というルールに基づいた手続とおなじようにTPP交渉を進めようとアメリカ政府が行動しているからだ。

TPAは2007年7月1日に失効しているが、アメリカ政府は、議会に対して、現在は失効しているTrade Promotion Authorityの手続に準じてTPPの交渉をやっているということを示そうとしている。

かつてファストトラックと呼ばれたこのルールでは、政府が相手国と交渉して合意した内容に関して、議会は修正をせず、その批准の可否だけを採決する。

貿易交渉のような複雑な交渉では、いったんまとめたものに対して議会が修正を求めるようなことがあれば、絶対にまとまらなくなるので、交渉は政府に委ね、議会はその賛否だけを採決するというファストトラックのルールが創られ、貿易交渉は都度、ファストトラックの権限を受けてアメリカ政府がやってきた。現時点で厳密に言えばこの権限はないが、そのルールと同じように議会とのコンサルテーションをしながら交渉してきたので、採決も同様にしてほしいということを政府は議会に対して求めることになる。

アメリカ議会にもアメリカ産業界にも、日本のTPP参加に対する賛否はいろいろあるが、概して歓迎する声の方が強い。

日本の他にカナダやメキシコもTPPへの参加の意思表示を始め、TPPの枠組みが広がりつつある。

ワシントンでは、いろいろな人から、日本国内で伝播される様々な都市伝説、たとえばTPPでは各国の健康保険制度も議論されるとか、安い労働力が入ってくるのを止められなくなるとか、がどこからわき出てきたものなのかと質問された。

TPPはアメリカの陰謀だという話もあるよと言うと、アメリカ政府の高官は、アメリカ国内のTPP反対派達にその話をしてやってくれと笑っていた。

アメリカ国内にもグローバリゼーション反対派はいて、彼らもさまざまな陰謀説を持ち出している。

きちんとTPPの持つ意味と内容を説明して、国民の理解を得ながら一歩ずつ進むというステップを、日本政府はもう少しきちんとやるべきだ。



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