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厚生年金の抜本的改革
2012.01.08
基礎年金について、1月2日付で、「消費税の引き上げについて」というブログを書いた。
http://www.taro.org/2012/01/post-1140.php さて、基礎年金の次は厚生年金だ。 厚生年金に関しては、2004年に大改革が行われ、「100年安心」年金ができたことになっている。もちろん、それは真っ赤な嘘だ。 100年安心年金とは、一、所得代替率50%を維持しながら(つまり現役時代の平均所得の50%以上を年金で確保する)、二、積立金が100年間枯渇しない、ということを意味する。 まず最初の問題は、所得代替率は、会社員とその妻で20歳から60歳までずっと専業主婦の夫婦を標準的なモデル世帯として設定して計算されていることだ。しかし、もはやこうした世帯がモデル世帯とは言い難くなっている。 それはここではさておいて、所得代替率は、既に2004年の改革時点で、将来50.2%まで下がることになっていた。その後、リーマンショックなどもあり、所得代替率50%を維持するのはもはや無理だと思われるが、2009年の年金再計算では将来にわたって50.1%を維持することになっている。この数字は、極めて嘘くさい。 この2009年の再計算は、明らかに厚労省によって粉飾された。 たとえば、2020年以降の年金積立金の運用利回りがずっと4.1%で維持されるという想定だ。2004年の計算では運用利回りは3.2%で想定されていたのが、一気に上がった。 さらに物価上昇率は、2011年から2015年までずっと1.9%となるという想定だ。デフレ脱却が大きなテーマだった2009年時点の想定としては、この数字はありえない。ちなみに2004年の計算では1.0%を想定していたのが、それさえも上回っている。 つまり、所得代替率が50%を下回らないために、どんな前提条件なら大丈夫かを計算し、想定の数字を逆においただけだ。 一方、積立金の方はどうかというと、2004年の想定では、2011年時点では、積立金はまだ積み上がっているはずだった。しかし、現実には2006年度に149兆円だった積立金は2011年度には既に112兆円まで取り崩されている。 このままでは厚生年金の積立金は2030年前後には全て取り崩されてしまう。 つまり、100年安心年金などというものは既に崩壊している。 さらに、高齢者の数を現役世代の数で割ってみると、 団塊の世代が引退した後も、高齢化はまだまだ続く。 今の厚生年金のように、次世代の負担する年金保険料で現時点の高齢者の年金を支払う賦課方式では、今後継続的に、次のどれかをやらざるを得ない。 こうした現実から目をそらすために、年金の将来の運用利回りは、厚労省によって粉飾されやすい。 現実よりも高く設定されたこの運用利回りを達成するために、年金資金の運用は過度に高リスク、高リターンを追い求めやすい。 さらに、厚生年金の世代間の損得格差は巨額になっている。 1940年生まれ +3090万円 人口が減少し、高齢化が進むこれからの日本に必要な年金制度とは「老後の生活を支える年金の財源を、自分自身が現役のうちに積み立てておく自分の世代で完結する積立方式の年金制度」だ。 積立方式ならば、前後の世代に負担をかけず、高齢化や人口減少の影響も受けない。 具体的には、 つまり、 現在の年金制度に対する不信感から、公的年金は廃止すべきだという声も聞かれるが、公的年金を廃止することはできない。 なぜなら、 民間の保険会社による私的年金は、年金の支払期間があらかじめ決まってしまい、自分が何歳まで生きるかわからない長生きのリスクに対応することは難しい。長生きのリスクを全てカバーするためには、平均余命に基づいて、早く亡くなった人の年金財産を相続させずに、長生きした人に分配する必要がある。それができるのは政府だけ。 どの程度の年金水準を維持すべきかという議論はあるが、公的年金をやめてしまうという議論は乱暴だ。ただし、公的年金制度を続けるためには、これまでの年金制度に対する不信をきちんとぬぐい去ることができるような改革が必要だ。 国民が信頼する年金制度でなければ維持していくことはできない。 賦課方式の厚生年金を、積立方式の年金制度に切り替えるためには一つ、大きな問題がある。 現行方式では、現役世代が支払っている年金保険料が高齢者への年金支払いの財源になっている。 積立方式の年金制度を導入すると、現役世代が自分の年金のための積立を始めるため、現在の高齢者の年金の財源となっている年金保険料がなくなる。 政府が現行の年金制度の下で支払われるべき年金の財源を肩代わりする必要がある。(「二重の負担」問題) 厚労省は、この二重の負担問題を大々的に取り上げて、だから積立方式への移行はできないと主張する。しかし、それは特別会計を失い、利権を失うことを避けようというためにする議論に過ぎない。 二重の負担の解消は簡単ではないが、できる。 他方、現行制度を継続すればどうなるだろうか。高齢化、少子化はこれからも長く続く。現在は現役3人で高齢者1人を支えているが2070年代には限りなく現役1人で高齢者1人を支えることに近くなる。 だから速やかに積立方式に移行すべきだ。(続く) |