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スパコン、つまりこういうこと?
2011.12.01
依然として文科省から、スパコンに関する質問に全く回答がない。
ほったらかしておくわけにもいかないので、専門家の話を伺って、私なりにまとめてみると下記のようになる。もし、とんちんかんな間違いがあればご指摘いただきたい:
かつてはメインフレームの開発に国がお金を出して、それが国内の半導体産業の発展につながったということがあったが、今や、国内の半導体産業そのものがスパコンとつながらなくなっている。
半導体を製造するためには、論理設計、物理設計、製造と段階があるが、もはやスパコンに関係する半導体の製造に関しては、国内にはなくなってしまった。
スパコン京に使われた半導体は富士通が45nmのパイロットラインで製造したが、量産は自社ではやらず、京を普及版にした富士通の製品では半導体は台湾のTSMCが製造している。
この富士通の半導体は、メインフレームとの協調性を確保するために、論理設計の段階で信頼性を担保しようとする独自路線で、信頼性はソフトウェアで担保しようとする業界標準路線よりもコストは高くなる。長期的に、この富士通の路線が存続できるかどうかはわからない。
スカラーとベクターに関しては、地球シミュレータ等のこれまでの資産を継承できるベクターか、ソフトウェアの作り直しは必要になるが速度の速いスカラーか、2006年から2007年に評価が行われた。
ベクター機は、東北大、阪大、地球シミュレータ後継機とJAXAなどの小型版などで300億円ぐらいの市場にはなるが、40テラの地球シミュレータの後継のベクター機として、数百億円かけて最速3ペタの機種の開発もやるか、ソフトウェアの継承はせず、スカラー一本で10ペタの開発をやるかという判断で、スカラーをとるべきという判断になった。
2009年5月頃にスカラー機はサンプルチップまでできていたのに対して、ベクター機は物理設計が終わっていなかったため、ベクターを待つと開発が遅れ、アメリカの20ペタのプロジェクトが前を走ることになる。
(結果的に、京の普及版は2012年春に導入されるが、もともと京仕様のベクターのスパコンは2013年になって新機種が導入される。)
NECが撤退を決め、京におけるベクターはなくなった。
文科省が説明するべき問題は:
このプロジェクトは、富士通のこれまで路線を助けただけではなかったか?(NECは助けられなかった?)
日本のメーカーは、コスト高でも独自路線を追及するべきなのか、インテル、AMDのプロセッサを使ってコストを下げるべきか?
京普及版は、東大への導入は決まったが、京大への導入はCRAYに負けた。富士通の独自プロセッサマシンにどの程度、国際競争力があるのか?
今回の京では、日本国内では量産しない独自路線のプロセッサを開発するために大型プロジェクトにしたが、そのプロセッサに国際競争力がないとしたら、そこにお金をかける意味が本当にあったのだろうか?
この京という大型プロジェクトをやるために、本来もっと意味があったかもしれない予算額の小さなプロジェクトをいくつも殺してしまったことは、結果としてマイナスなのではないか?
これまでの富士通、NECの路線の上での手直しのための大型プロジェクトよりも、スカラーなどにもこだわらない、もっと実験的な全く新しい方式の設計の可能性を追求するようなプロジェクトの方が意味があったのではないか?