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「税と社会保障の一体改革みたいなもの」の問題
2011.11.29
民主党政権のやろうとしている「税と社会保障の一体改革みたいなもの」の中には、ちょっと待ってよと言いたいものがいろいろとある。
まず、厚生年金の年金保険料の引き下げ。
厚生年金の年金保険料の標準月収は、98000円。この収入がなければ厚生年金には入れない。
しかし、これを引き下げれば、被用者で国民年金に加入している者を厚生年金に加入させることができる。国民年金を職業別にみると一番多いのが、本来は厚生年金に入るべき被雇用者となっているので、標準月収の引き下げは、400万人に被用者保険適用拡大をうたう民主党政権にとって魅力的かもしれない。しかし、...。
現在の標準月収の下限98000円の場合の保険料は、労使合計で16084円。
この標準月収の下限を引き下げると、厚生年金の保険料が、国民年金保険料15260円より、安くなる可能性がある。基礎年金しかもらえない国民年金の保険料よりも安い保険料で、基礎年金と厚生年金の両方がもらえるようになるのは、公平なのだろうか。
さらに各健康保険制度から介護保険に投入している介護納付金制度の負担金の計算方法を、人頭割から全て収入比例に変えようとしている。
こうすると、社員の収入の多い大企業の健保組合の負担が増え、協会けんぽなどの負担が減少する。それだけでなく組合健保の負担をさらに増やして、協会けんぽへの国庫補助を廃止して1600億円の歳出カットももくろんでいる。
問題は、保険料による所得の再分配をこれ以上続けるのか、ただでさえわかりにくい、社会保障制度をもっとわかりにくくしていいのか、ということ。
政治のガバナンス、あるいは国民の信頼というならば、わかりやすい制度にして、金の流れが誰にでも理解できるというのが絶対条件だ。国会議員でも理解できないような制度の間の金のやりとりを放置して、政治主導などできるはずがない。
所得再分配は税金で行う、保険料はきちんと対価として戻ってくるという原則をまず打ち立てて、制度をそれに基づいて再構築することが必要だ。
組合健保から後期高齢者医療制度を支援しますなどというわかりにくいことをせず、直接、必要なところは家計を税で支援するわかりやすい制度にすべきだ。そういう抜本改革を、与野党でいっしょにやろうではないか。
古川大臣も、厚労官僚の手のひらの上で踊るのはやめるべきだ。