変動金利の住宅ローン

2010.12.10

この低金利時代に、変動金利の住宅ローンで家を買うことに僕は疑問を持っている。

金利が普通に上下している時ならば、金利は上がったり下がったりするだろうし、変動金利で借りる意味も固定金利で借りる意味もあるだろう。しかし、今はそういう時ではない。

もちろん僕は金融の専門家ではないし、住宅の専門家でもない。だから僕の意見を鵜呑みにされても困るが、それでも問題提起は必要なのではないかと思う。

実は、僕の知っている若い人の中にも変動金利の住宅ローンを借りている人が結構いる。この低金利時代になぜと聞くと、固定金利は利率が高いからというのがほとんどだ。

しかし、住宅ローンというのは目先の利率だけで選ぶものなのだろうか。

この低金利時代に変動金利の住宅ローンを借りるべき人もいる。金融機関のホームページなどを読むと、例えば住宅ローンの期間が数年間と短いなら、今は変動金利で借りるべきという説明がある。金利が上がる前に返済し終わるならば、目先の利率が低い方がよい。これはその通りかもしれない。でも、もし住宅ローンの期間が三十年というならば、これにはあたらないだろう。

住宅ローンの最初の方で、贈与や相続などがあって繰り上げ返済する予定があるならば、変動金利という説明もある。ただ、贈与してもらうから繰り上げ返済というのは計画できるが、相続で繰り上げ返済するから云々は、ちょっとひっかかるものがある。

変動金利の住宅ローンを借りている若者は、こういう説明を聞いて、それに当てはまると思って変動金利の住宅ローンを選んだのだろうか。

「金利がこの先あまり上がらないと思う人は変動金利で借りるべき」という説明もある。理屈はそうだが、ちょっと待ってくれ。この先二、三年の金利がどうなるかというならば、予想はできるかもしれない。二、三年のことならば、はずれてもそうダメージはないかもしれない。しかし、住宅ローンはもっともっと長期だ。金利の先行きがどうなるかなんてわかるはずがない。

「過去十年、金利は上がらなかった」というのは、過去の事実を述べているだけであって、これから先のことはわからない。

他でもない今は金利がおそらく最低水準だ。これより上がることはあっても下がることはあまりないだろう。千万の単位の買い物をする時に、金利が上がるかどうかのギャンブルをする必要があるだろうか。三十年間、金利のことでどきどきしながら暮らす必要があるだろうか。

金利の他にも、給料が上がらないリスク、健康リスク、子供が医学部に進学するうれしいリスク等々、将来は不透明だ。そのなかで、家族でするおそらくもっとも高価な買い物である家のローンを変動金利にしてさらに金利リスクを増やす必要があるだろうか。固定金利にして、家を買うためにこの金額を支払うと決めて、リスクを一つ減らした方がよいのではないだろうか。

たしかに住宅ローンぐらいの金額になるとわずかな金利差が大きな支払総額の差になってくる。優遇金利等を使って少しでも金利を下げる努力は必要だ。でも、足下の固定金利と変動金利の差まで使ってリスクをとるべきなのだろうか。

いろんな金融機関の変動金利の利率を調べて一番安いところで借りるというだけでは、リスクを軽減したことにならない。

固定金利で払ったらこんな金額になってしまうと思うのだったら、変動金利で目先の利率を下げるよりも、もっと価格の安い住宅にすべきではないか。

たしかに金利が三十年間上がらなかったら、変動金利の方が得だったことになる。でも、そんなリスクを背負って三十年暮らすのが幸せだろうか。金利が三十年上がらないということは、景気も三十年良くならないということだ。金利は上がらないが将来の給与のリスクは上がる。

ある銀行に、なぜこの低金利なのに変動金利で住宅ローンを貸すのかと尋ねたことがある。変動金利で借りても金利が上がったらいつでも固定金利に切り替えられるから大丈夫ですよ、という答えだった。

変動金利が上がったら、そのときは固定金利も上がっている。素人の借り手が金利が高くなったと気づく前に、プロの貸し手は金利を引き上げているだろう。いつでも固定金利に借り換えできますという説明は、嘘ではないかもしれないが、意味がある答えなのだろうか。

固定金利も変動金利も、理論的には支払金額は一緒ですとも言われた。将来の金利上昇を見込んで固定金利は設定されているので、支払金額は理論的には一緒です、と。

変動金利も固定金利も支払総額は一緒だといっても、変動金利は、金利が上がれば月々の支払い金額は増える。今、ぎりぎりのところで住宅ローンを支払っているなら、もし将来、金利が上がって、給与が同じように上がらなかったら、支払いができなくなる。変動金利で借りるなら、給与を確実に上げるか、金利の安いうちに固定金利の返済額との差額を貯金して将来の金利上昇に備えるかしなければならない。固定金利ならば、完済までひたすら同じ金額を支払うだけだ。

変動金利の住宅ローンは金利が上がっても支払いはそれまでの支払額の1.25倍までしか増えない。もし月々の支払金額がそれまでの支払額の1.25倍を超えるようなところまで金利が上がると、金融機関はまず、支払額から利息を先にとるので、元本の返済額が予定より少なくなる。その結果、元本は予定通りに減らず、利息が増えていく。最終的な住宅ローンの支払総額は増える。

変動金利の住宅ローンを借りた若い人のなかに、目先の金利差以外のことまで考えた人がどれだけいるだろうか。僕が話をした人のほとんどは金利が安いから変動金利という答えだった。

なかには最初の何年間かの金利を固定にして、「私は固定金利で借りています」という若者もいる。それは変動金利の一種であって、固定金利ではないということも理解していないで、住宅ローンを借りている。

僕が保守的すぎるのかもしれない。金利はこの先もあまり上がらないのかもしれない。上がっても少しだけかもしれない。固定金利で住宅ローンを借りてしまって、本来、払わなくてもよかった余計な金額まで返すことになるのかもしれない。でも、金利が上がるかもしれないのだ。そのリスクを理解して、金を借りているのだろうか、そして、その住宅ローンを借りている人の状況を理解して、金融機関は金を貸しているのだろうか。

僕にはそうは思えないのだが。



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