外国人労働者の受け入れを本音で議論しよう

2006.09.29

法務省が先日発表した外国人労働者の受け入れに関するプロジェクトチームの最終とりまとめ(http://www.moj.go.jp/NYUKAN/nyukan51-3.pdf)に関して、あるマスコミは「外国人の受け入れに上限」と報道し、他のマスコミは「単純労働者の受け入れを認める」と見出しを付けた!?

現在の日本の外国人労働者の受け入れ政策は、上品に言えば本音と建前が乖離している。普通の日本語で言えば、ほとんどイカサマである。
我が国は、大卒以上または実務経験十年以上の外国人労働者を技術的、専門的分野の外国人と位置付け、ここにあてはまる者は受け入れている。(この分野のな かには高度人材というカテゴリーがあって、そこにあてはまる人は積極的に日本に来ていただきましょうということになっているのだが、高度人材の明確な定義 はない)
で、この大卒以上または実務経験十年以上の者以外は、今の入管の定義では、全て「いわゆる単純労働者」なのだ。(単純労働者の定義は何かはっきりしないた め、「いわゆる単純労働者」とよぶ)そんでもってこの「いわゆる単純労働者」外国からは受け入れないというのが基本政策だ。

ところが現実にはこの「いわゆる単純労働者」(面倒くさいので以後、単純労働者と書く)のカテゴリーの外国人がたくさんいる。まず、日系人。
平成元年に、日本人の血を引く日系人は、三世およびその扶養者までは無条件で定住ビザをもらえるという入管法の改正があった。日本人の血などといっている が、当時、バブルで労働者不足を解消しようとして、しかも大方針の外国からの単純労働者は入れないという方針を変えないまま、外国からの労働者(しかも日 本人より低賃金)を入れるための裏口として、こんな政策が打ち出されたのだ。

この結果、今日、特定の地域に南米から来た日系人が集住(特定の団地などに集中して日経の南米人が住んでいる)し、その大半は日本語がわからず、日本社会に溶け込むことなどまったくできず、ポルトガル語あるいはスペイン語のコミュニティを作って固まっている。
しかも、親についてきた子供に関しては、文部科学省が外国人の子供は義務教育の対象ではないなどというものだから、国として、ぜんぜん責任を持って教育を 受けさせる体制にない。浜松市などは年間にポルトガル語しかできない子供を市立小学校に入れるために一億数千万円の費用を市が負担している。
教育を受けられない子供には明るい将来はないだろうし、集住コミュニティの近くの町内会ではゴミ出しのルールから伝えられないで問題になるし、せっかく来日した日系人だって日々不安である。この現実を直視した政策が必要だ。

さらに、技能研修なるインチキがまかりとおっている。発展途上国からきた研修生に技能訓練をして、本国でその技能を活用した職についてもらうという 建前だが、これは完全に低賃金労働者を外国から入れるための(しかも単純労働者は入れないという方針を変えずに)隠れみのである。研修生は研修をしてい て、労働をしていないという建前なので、労働基準法が適用されず、賃金ではなく手当を支払うことになる。
中国から来る研修生の場合、多くは三年間きちっとおつとめをしますという誓約書を書かされ、保証金を積んでくる。三年間きちんとおつとめしなければ巨額の保証金は没収される。しかも、来日するととんでもない条件で研修(!)するのだ。
日系人や技能研修生という裏口から入った単純労働者が国内に多数いるという現実を、単純労働者は受け入れていませんという建前で覆い隠してみないふりをする。
しかし、現実には自治体は大きな問題を抱え、低賃金労働を強いられる外国人は社会保障の対象にもならずに、日本社会に入ることもできずに、子供は学校にも行かずに、...。

今回の法務省のプロジェクトチームは、こうした現実を直視し、建て前と本音の乖離を許さずに、問題解決をしていこうという主張を出した。

まず、日系人という血のつながりだけで定住ビザを出すのはやめようと提案している。すでに国内にいる日系人に対しては、国の責任できちんと日本語教 育が受けられるようなシステムを作り、その上で一定の日本語能力と生活を維持するための定職を持つことをビザ更新の条件にしていこうと提案している。

技能研修に関しては、新しく労働ビザを出す仕組みを作り上げ、それと同時に技能研修制度は廃止するとしている。
労働ビザを出すためには、「いわゆる単純労働者」といわれている部分を二つに分け、専門的、技術的分野ではないが一定の技能が必要な分野(特定技能)を認 定し、その分野で必要な技能を検定する資格制度を創設する。そうした整備ができた分野から外国人労働者を特定技能労働者として入れることを認めるが、労働 ビザの対象となるためには一定の日本語能力をあらかじめ身につけていることが要求される。
来日後、三年以内に一定のさらに高いレベルの日本語能力を身につけると同時に、その職種での高いレベルの資格を取ることができれば、労働ビザの更新を認 め、家族を呼び寄せることができるようにする。配偶者にも日本語能力を身につけていることを要求し、子供は義務教育の対象となる。
外国から来る労働者に対しては、日本人と同等の賃金を払い、社会保障の適用とする。雇用する企業には賃金の支払いと共に外国から労働者を受け入れることにより発生する社会的コストの一部を負担してもらうこととする。
こうした新しい仕組みを作ることにより外国人労働者をルールにそって受け入れることにするというのが提案だ。

今の日本には、外国人労働者を受け入れるという選択と受け入れないという選択がある。私は、外国人労働者を受け入れないという選択では、人口減少時代の日本を繁栄させていくのは難しいと思う。
外国人を仮に受け入れるとするならば、現在の技能研修のように一定の期間で本国に帰ることを前提とする制度で受け入れるという選択と来日した外国人が一定の条件を満たせば永住し、帰化することも選択することができるという制度で受け入れるかを議論しなければならない。
我々の提案は、来日した外国人が一定の条件を満たせば、ビザを更新し、家族を呼び寄せ、永住資格を取り、帰化することへの道を順番に開いていこうというものである。

無制限に外国人を入れようというわけではない。現在、日本国内に住む来日外国人の割合は約1.2%だ。日系人の受け入れをやめ、技能研修をやめ、特 定技能労働者に日本語能力を求めることにすると、最初、この割合は下がる。その後、制度が定着すると割合は再び上がり始める。来日外国人の割合が約3% (つまり現在の2倍以上の割合だが、ヨーロッパ各国の割合よりは低い)ぐらいになったところで、もう一度政策を議論し直すことにする。特定技能労働者の人 数は、雇用する企業が負担する社会的コストの割合を上下することでコントロールする。

他方、一定期間働いた外国人を本国に必ず帰すという選択は、日本社会に外国人を入れたくないという感情があり、また、三年ないし五年という期間で必 ず帰国させ、次の人間を入れれば昇給させなくてすむ、つまり安い外国人を安い給料で使い続けることができるという本音が見え隠れする。

外国人を安い労働者として入れることは、日本人の賃金に下向きの圧力をかけることになる。外国人労働者にはあくまで日本人と同等の給与を保障する必要がある。
もちろんいまよりはきっちりした外国人の在留管理システムが必要になるし、不法滞在、不法雇用には今よりも数段厳しい姿勢で臨まなければならない。
まだまだたくさんの論点があるが、外国人労働者をどう受け入れるかという問題をきちんとテーブルに載せ、本音でこれからの政策議論を始める必要がある。



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