2005年6月11日号
2005.06.11
エネルギーフォーラムという雑誌がある。一応専門誌ということになっている。その六月号に「論説室の窓」というページがあって、「また六ヶ所の価値が上がった」というタイトルが付いている。
冒頭いきなりで「六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場のウラン試験をめぐり、現職の自民党国会議員を巻き込んだ大騒ぎが原子力委員会で演じられた」とあるが、これはまさか私のことではないと思うが...。
「現在は初期故障などのトラブルを除けばほぼ順調に試験が行われている」とある。が、現実には六ヶ所再処理工場の使用済み燃料受け入れプールで水漏れが起きている。確かに量は軽微ではあるが、平成十四年に水漏れが確認され、平成十五年に291カ所の不適切な溶接が見つかり、総点検を行った場所である。平成16年に総点検に関する検討会が行われ、総点検の結果は妥当だとされ、保安院もokし、県も認めた。そこがまた、水漏れである。初期故障というほど簡単なものではない。しかも、水漏れの原因は特定されていない。保安院も青森県もどうするのであろうか。
「(原燃が計画しているMOX工場が)実現すれば六ヶ所村は使用済み核燃料の再処理で得たプルトニウムにウランを混ぜ一般の原子力発電所で燃やす商業用で初のMOX工場を有する核燃料サイクル政策の要の地域となる」わぁーお。詭弁である。
核燃料サイクルとは再処理して得たプルトニウムを高速増殖炉で燃やすからエネルギー資源としての価値が出るのだ。プルトニウムをウランと混ぜて一般の原発で燃やすプルサーマルは、高速増殖炉ができないのでプルトニウムの処分に困ってやる敗戦処理なのだ。プルサーマルではウランは約一割しか節約できない。
埋蔵量で七十年分のウランが七十七年になるだけなのだ。プルサーマルを核燃料サイクルなどとごまかしてはいけない。
「反対派の主張は...肝心の資源経済の観点が脱落していた」
馬鹿言っちゃあいけないよ。今の核燃料サイクルは、まず再処理に数十兆円(19兆円と言うが再処理工場の建設は見積もりの三倍かかったことを考えると六十兆円とも言える)をかけてプルトニウムを調達し、さらにウン兆円かけて高速増殖炉の開発をやり、おそらく2050年ごろに高速増殖炉で発電される電気のコストが実用的な額まで下がったら...すごいね、というものだ。
それだけのお金を再生可能エネルギーに投資し、2050年になったら、たぶん再生可能エネルギーで相当なエネルギーをカバーできるようになっているはずだ。
しかも、太陽光や風力をはじめ再生可能エネルギーは海外に輸出もできる一大産業になるが、再処理したプルトニウムを使う核燃料サイクルでは海外に輸出はできない(プルトニウムを拡散させてしまう!)。
今の現状で、再処理が資源経済のうんぬん等とはとても言えない。
「核燃料サイクルも天然ガス確保も日本としてはどちらも大切な政策で、両立させなければならない」馬鹿いってんじゃないよ。核燃料サイクルのどこが大切な政策なのか言ってみろ。高速増殖炉があっての核燃料サイクルだろうが。やっともんじゅの裁判が終わったばかりで、推進派だって、まあ2050年頃にどうにかなっていたらいいなあ、数十兆円かかるけど、という政策のどこが天然ガス確保と同じぐらい大切なのか。
「核燃料サイクルに反対した政治家の場合、...再処理に代わる資源確保のことや、再処理をせずに直接処分する方法や場所などについての知識の欠如が見られた」ほーお、高速増殖炉のない再処理が資源確保になるんですかい?
高レベル放射性廃棄物にしろ直接処分にしろ、場所はあるんですかね。2030年ごろに決定としか言えねえじゃねえか。
エネ庁の担当者に聞いてみろ。「将来的に(私がもういなくなったはるか後に)しっかり決めます」しかいえねえじゃないか。
知識の欠如じゃなくて責任の欠如なんだ、アホンダラッ。
「再処理しなければ現在国内の52基の原子炉から出る使用済み燃料の保管場所がなくなり、地元との協定により必然的に原子炉を停止させなくてはならなくなる」なんだ、わかってんじゃないか。
再処理の問題はようするにこういうことなのだ。日本のエネルギー資源がどうのこうのとか、石油の戦略資源としての云々とかの問題ではないのだ。再処理しますと言わないと六ヶ所村の貯蔵プールに使用済み燃料を持っていけなくて、原発が止まると電力会社が莫大な損失を出すということが再処理の問題の唯一の論点なのだ。
それを原子力村総出で、エネ庁のいい加減な官僚と欲に走った政治家と知ったかぶりの評論家を巻き込み、マスコミは札ビラで黙らせられているのが再処理なのだ。
まったく何が「六ヶ所の価値が上がった」なのか。六ヶ所のコストが上がったの間違いでしょ。