2002年7月30日号 その2

2002.07.30

住基ネット その二

住基ネットのもとになっているのは、住民基本台帳です。
 住民基本台帳は、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成したものです。
 住民票には、氏名、生年月日、男女の別、世帯主との続柄、戸籍、その自治体の住民となった日、住所、新たに自治体内に住所を定めた日と従前の住所、選挙人名簿登録の有無、国民健康保険の資格に関する事項、介護保険の資格に関する事項、国民年金の資格に関する事項、児童手当の支給に関する事項、米穀の配給に関する事項、その他政令で定めるもの(これらを十三情報という)が記載されています。
 住基ネットが取り扱うのは、この内の氏名、生年月日、男女の別、住所の四項目(これらを四情報という)です。
 この氏名、生年月日、男女の別、住所の四情報は、現在でも、一般公開されています。例えば、あなたが、来年小学校に入学する子供を持つ親に対して、ランドセルを売り込むためのダイレクトメールを出したいと思ったら、市役所に行って、この四情報の閲覧を申し込めば、市内に住む全住民の四情報が載った冊子を見ることができます。この現在でも公開されている四情報と新たに制定される住基コード、そしてそれらの変更情報(これらを六情報という)をコンピュータネットワークに載せたものが住基ネットです。
 住基ネットに使われる住基コードは、無作為に抽出される十桁の数字とその十桁が誤入力されていないことを確認するために使われる十一桁目の数字で、成り立っています。
 つまり、住基ネットには、既に閲覧可能な状態にある四情報と住基コード、その変更情報の六情報だけが載っています。

 住基ネットの意味は、e−Japan構想を推進し、電子的に届出や申請を出すことができるようになったときに、その申請者が間違いなくその自治体に住んでいることを、申請を受けた行政機関が確認するための手段も電子化しておくということにあります。
 現在、届出、申請をするにあたって、住民票の添付が必要になっているものがあります。これは、申請者が間違いなく、その自治体の住民として存在するということを、申請を受けた行政機関が、添付された住民票で確認しているのです。届出や申請を電子的に行うことが可能になったときに、住民票も電子的に確認できるシステムを作っておかなければ、申請書は電子的に提出したけれど、あとから住民票を持って行ったり、郵送したりしなければならなくなります。

電子政府の推進にあたり、申請や届出を電子的にできるようにしていこう、そのときに、住民票の添付が必要なものについては、住基ネットで四情報を確認していこうというのがこのシステムの本来の目的です。
 行政機関が住基ネットを使って処理できる行政業務は、改正住基法の別表に全てリストアップされていて、これ以外の業務に住基コードを使用することはできません。
 この別表の業務が増えていくことになって大丈夫か、という疑問がまずあると思います。
 今、各省庁は、これまで紙で届出を出してもらっていたものを、電子的に届出をすることができるように努力を進めていますが、こうした新たに電子的に届出をできるようになった業務のうち、これまで住民票の添付が必要だったものについては、住基ネットで四情報を確認することができるように、改正住基法の別表を改定していくことになります。
 確かに住基ネットを使用する業務の数は増えますが、どの業務も住民票を確認するという作業を住基ネットで確認するという作業に置き換えているだけです。こうした業務の追加は、住基ネットを質的に変化させるものではありません。

 ところが、住基ネットで扱う住民票の項目を、四情報から増やすということが、仮にあるとすると、これは別な話になります。例えば、年金や医療保険の情報や世帯主との関係なども住基ネットに載せようということになると、ちょっと待てよということになります。住基ネットの上で電子的に流れている情報は、本来、誰でも閲覧ができることになっている四情報だけ、という前提が変わってくるわけですし、住民票を添付してもらう代わりに電子的に申請者の確認をするために必要な情報以上のものがネットワークに流れ出ることになりますから、これは、住基ネットそのものが変質することになります。
 あるいは、年金番号をこの際廃止して、住基ネットで使っている住基コードをそのまま使おうとか、運転免許証の番号も住基コードと同じにしようとか、国税庁が納税業務にもこの番号を使うよということになると、これは、新たな、というよりも危険な展開になります。
 河野太郎という人間に関する情報は、何から何まで、全て12345678901という番号で管理されているということになると、いろいろな行政機関の持っている河野太郎に関する情報を簡単に集めることができます。行政にとっては都合が良いことかもしれませんが、国民にとっては、何もメリットがありませんし、個人の情報が簡単に行政によって集められてしまうというのは、個人のプライバシーを考えると、大問題です。
 住基ネットが扱う情報が四情報よりも増える、あるいは住民票の確認を電子的に行うため個人につけられた住基ネットの番号を、他の行政業務にも使うという動きには、気をつけなければなりません。

 もう一つ、危険なことは、住基コードという番号を、民間が使い出すことです。
 例えば、全国展開をしているレンタルビデオチェーンの多くは、顧客名簿をコンピュータで管理しています。コンピュータをたたけば、特定の人がどういうビデオを、いつ、どの店で借りたか、ということが一目瞭然にわかります。
 消費者金融では、個人が、いつ、いくらお金を借りて、いつ返したかということが記録されています。カルテの電子化が進んでいる病院では、コンピュータ端末をたたけば、あなたの病歴や処方箋を全部見ることができます。
 ただ、幸いなことに、レンタルビデオの会員証番号と消費者金融が持っている個人の情報と病院の診察券の番号には、何も関連がありません。
河野太郎のビデオの記録とお金の借り入れと病歴の記録を調べようと思ったら、結構大変です。
 もし、ビデオショップが、顧客管理に便利だからと顧客から住基コード番号を聞きだして、これを会員証の番号に使うことにしたらどうでしょうか。消費者金融が、河野太郎の顧客コードに住基コードをそのまま使うことにしたらどうでしょうか。病院が、河野太郎の十一桁の住基コードをそのまま診察券番号にしたらどうでしょうか。河野太郎の個人情報を集めようと企む人間は、12345678901という番号を一つ探り出すことで、ビデオの貸し出し履歴から、お金にまつわる情報から、河野太郎がこの一年間に飲んだ薬の情報まで、この番号一つで検索することができます。
 もちろんそのためには、ビデオショップと消費者金融と病院の三つのコンピュータに不正アクセスする必要がありますが、コンピュータから情報を検索して取り出すプロセスが、個人がなんでもかんでも一つの番号で管理されていると、極めて簡単になります。
 改正住基法では、民間が住基コードを尋ねたり、データベース化した場合に、まず、都道府県知事が中止を勧告し、従わない場合は一年以下の懲役または五十万円以下の罰金を科しています。住基ネットを民間に開放する計画は将来にわたり、全くありませんし、住基コードの民間利用は、将来にわたり禁止されなければなりません。



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