おすすめの一冊

2017.01.14

毎日新年会のはしごが続き、日付もよくわからなくなる昨今ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

ということで、久々に、おすすめの一冊です。

“The Politics of Resentment: Rural Consciousness in Wisconsin and the Rise of Scott Walker” Katherine J Cramer

cramer

アメリカ国内で爆発寸前の政治的なうっぷんを描いた本といえばよいでしょうか。

トランプ新大統領の就任式を前にお勧めです。

私は、シラキュース大学の政治学教授に勧められて読み始めました。

ウィスコンシン大学マディソン校の政治学の教授である著者が、ウィスコンシン州内で徹底的に州民をインタビューした結果から導き出したアメリカの農村の政治意識をまとめたものです。

農村の有権者が「都市のエリート」に対して抱いている憤り(Resentment)を描き出しています。

本来、大きな政府から様々な恩恵を受けているはずの有権者が、大きな政府を主張する候補者に反発し、大きな政府という考え方そのものに反対するのはなぜかということをウィスコンシン州の農村の有権者の日常会話から探り出していきます。

この調査の特徴は、アメリカの政治学にありがちな世論調査などの数値解析をするのではなく、徹底的に話を聞いて有権者の考え方の根底にあるものを探り出していくことにあります。

農村の有権者は、政治から妥当なレベルの注目も浴びておらず、財政的な支援も受けていないと感じており、自分たちは都市部の住民とは違う価値観のもとで生きているにもかかわらず、その価値観が都市部のリベラルなエリートたちに理解されていないと感じています。

農村部の有権者は、自分たちが支払った税金の多くは都市部の住民たちのために使われていると感じており、大きな政府イコール自分たちから収奪される金額が大きくなると感じています。

初期にオバマ大統領を支持したウィスコンシン州のこうした住民たちは徐々にオバマ大統領も他の政治家と同じように農村に興味を持たない政治家なのだと感じるようになりました。

そこへ現れたスコット・ウォーカーウィスコンシン州知事は、こうした住民たちに小さな農村側に立つ政治家としてアピールし、リコールされてもそれを乗り切り、さらに再選されるほどの支持を得ました。

こうした政府への反感は、公務員や教員に対する反感につながっていきました。

アメリカの農村部はだんだんと共和党寄りになってきました。同時に、所得が低い人ほど民主党に投票する傾向があります。

しかし、民主党の強い州では、平均所得の低い地域ほど共和党に投票する割合が高いという現実があります。

これは、上記のような農村の有権者の大きな政府に反発する気持ちから、共和党への投票が起きていると解釈できます。

共和党は、農村部の有権者に対して、所得の高い人たちへの反発ではなく、政府と公務員、都市部のリベラルに対する反感を植え付けることに成功したと分析しています。

こうした有権者が小さな政府を支持したのは、リバタリアンの考え方に共鳴したからでもなければ共和党の政策を支持したからでもなく、政府の提供する様々なサービスは一生懸命に努力する人々、つまり自分たちのような人々に提供されているのではないと感じているからだと結論付けています。

なぜウィスコンシン州民はスコット・ウォーカー知事を支援したのかを分析することが、なぜアメリカ国民はトランプ新大統領を支持したのかを理解することにつながりそうです。



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