農協改革とは

2015.02.10

農協改革の骨子がまとまりました。

全中と呼ばれる全国農業協同組合中央会が、農協法に基づいて、これまで独占してきた農協の会計監査と業務監査を廃止し、会計監査は公認会計士による監査を義務付け、業務監査は必要な時にそれぞれの農協が自由にコンサルを選ぶことができるように任意のものにします。

全中は、農協の上部団体であるという農協法上の位置付けをなくし、指導、監督権限を持たず、賦課金を強制的に徴収することができない一般社団法人に移行します。

(現在、賦課金は年間一農協当たり平均2400万円、合計78億円)

農協の理事の過半数を認定農業者や農作物販売・経営のプロとすることを求めます。

連合会や農協は、所属する単位農協や組合員に対して事業利用を強制してはならないことを明記するとともに、連合会や農協は、単位農協や組合員が自主的に設立し、運営する組織であることを徹底する規定を整備します。

今回の農協改革は、農家の所得を増やすという目的に向かった一歩です。

以前、農水省は「カロリーベースの食料自給率」などというまやかしの数字を政策目的に掲げていたことがありますが、ようやくそれを改め、農家の所得や農作物の輸出額を増やすというあたりまえのことを目的とした政策に転じました。

(食糧自給率に関しては 動画:河野太郎の主張 農業シリーズ1 「食料自給率」のワナ

農家の所得を増やすためには農協も大切な役割を果たします。

しかし、農協が今と同じことをやっていては農家の所得を増やすことはできません。

農家自身はもちろんですが、農協が、より知恵を出すか、より汗をかくか、よりリスクをとるかしなければ、今よりも農家の所得を増やすことはできません。

今回の農協改革は、それができる農協をつくるための一歩です。

例えば静岡県の三ケ日町農協は、単純に絞ってジュースにしただけでは7円/kgにしかならない規格外のみかんを、ペーストやシロップに加工し、サントリーや山崎パンの製品の原料に使えるようにすることで、生産者の手取りを25-50円/kgに引き上げました。

あるいは高知県の馬路村農協ではゆずを農家から全量買い取り、ゆずドリンクやポン酢に加工し、馬路村ブランドを確立することによって平成元年に1億円だったゆず加工品の売上高を平成24年には30億円まで増やしました。

こうしたそれぞれの農協のように、各地の農協が独自のアイデアと努力で売り上げを増やし、組合員の手取りを増やす取り組みをやりやすいように、農協の組織を簡素化し、地域の農協の自由度を確保しようというのが今回の改革です。

これまで農協は、地域農協の上に県の中央会(県中)があり、その上に全国の中央会(全中)があるというピラミッドでした。

地域の農協は、全中の会計監査と業務監査を受けることが義務付けられていました。

それが全中、県中の指導に従っていればよいという安易な考えに地域の農協が陥る危険をはらんでいました。

それでは自律性、自主性を持った農協になりません。他人とは違った発想の下、他人がやらないことをやってこそ、儲かるビジネスが生まれてきます。

他方、法律上も強固な権限を持つ全中は、中央集権的な考えで農政を動かそうとしがちです。

全中が行う業務監査はいわば経営コンサルティングです。それを全中だけに限定している現行法は、もっと大胆な発想に基づいた改革を取り入れるチャンスをつぶしていると言えます。

さまざまなアイデアを取り入れることができるように間口を広げようというのが全中監査の廃止の理由の一つです。

一つの頂点を持つピラミッド構造からたくさんの頂を持つ山脈構造に変えようというのが今回の改革です。

もう一つがリスクへの対応です。

言わば経営コンサルティングである業務監査と会計監査を同じ全中がやる現状は、さまざまなリスクを内包しています。

経営コンサルティングと会計監査は、実施主体が明確に分かれているべきです。

もともと農協の事業は出資している組合員が利用するのが基本です。しかし、信用事業と呼ばれる農協の金融サービス等は、准組合員や組合員・准組合員以外にもひろく利用されるようになっています。

組合員以外にもこうした利用者が広がってきた現状では、農協の経営状態をしっかりと監査し、広く世の中に示していく必要があります。

全中監査は、上部機関とはいえ、身内の監査の域を越えられません。組合員以外にもたくさんの人が利用するサービスを提供している農協になったからこそ、しっかりと外部の目を入れて、健全性を担保する必要があります。

また、貯金金額が200億円を超える金融機関は、銀行、信用金庫、信用組合に関わらず、すべて公認会計士による会計監査が義務付けられています。

200億円以上の貯金金額を持つ信用事業を行う農協は、他の金融機関と同じ会計監査を受けることによって、健全性を世の中に示す必要があります。

これまでの農協は、組合員から販売委託を受け、販売の再委託や卸売市場・卸売業者を通じた販売が中心で、組合員からの買取や契約販売は多くありませんでした。

農家の手取りを増やすためには、販売委託から買取や契約販売によって単価を上げていくことを考えなければなりません。

リスクは農家が負ったまま、農協は販売手数料で稼ぐというリスクの少ないビジネスモデルからリスクをとったビジネスモデルへの転換が必要になります。

よりリスクをとる経営をするならば、健全性、透明性を確保するために、よりしっかりと外部の目を入れた監査が必要になってくるはずです。

だからこそ、上部組織である全中による「内部監査」から、公認会計士による外部監査への移行が必要になってくるのです。

農協法上の監査権限を廃止すればすぐに農家の収入が増えるかと言えば、まったくそんなことはありません。

しかし、それぞれの農協が自主性、自立性を持って農家の利益になるビジネスを展開するためには、上部組織を頼ったり、中央集権的な組織の一部であったりしてはなりません。

そして、農協がリスクを負ったビジネスをしていこうとするならば、それに見合った透明性の確保が必要になります。

そのための環境を整備するための農協改革です。



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