社会保障改革2025 年金の隠された問題

2025.05.09

国際医療福祉大学の稲垣誠一教授が、ダイナミックマイクロシミュレーションという手法を使って、高齢者の将来貧困率を推計して提示した研究があります。

超党派の年金勉強会の幹事会に稲垣先生をお招きして、その内容を伺いました。

稲垣先生によると、現在の高齢者は高度経済成長期の現役世代であり、これらの世代のために作られた現在の公的年金制度は非常にうまく機能してきたが、高度経済成長期移行の社会の変化に年金制度はついていけておらず、今後は問題が顕在化してくる。

1980年代まで、つまり現在の高齢者のライフスタイルは、
ほとんどが結婚し、離婚しない
夫はサラリーマン、妻は専業主婦と男女の役割分担があった
女性は就職しても20歳代で結婚し、専業主婦になる

それが1980年代以降、つまり将来の高齢者のライフスタイルは、大きく変化した
結婚しない男女が増え、三組に一組が離婚する
男女の雇用格差、つまり女性は非正規雇用が多く、正社員であっても賃金水準が低い
専業主婦世帯は標準ではなくなる

こうしたライフスタイルの変化に公的年金は対応できていません。

これまでの公的年金の対応は、
支給開始年齢を引き上げ
支給開始後の年金は物価スライドのみに限定したため、例えば、同じ年度の65歳の年金に比べ、85歳の年金はかなり低くなる
マクロ経済スライドにより、年金額の多寡にかかわらず年金支給額は一律カットされるため、低年金になればなるほど生活が苦しくなる
基礎年金は保険料方式を維持したため、貧困に陥り生活保護の対象になる低年金者が必ず発生する

今後、マクロ経済スライドにより、基礎年金の水準そのものが低下し、さらに年金の受給開始後は物価スライドに限定されるため、賃金スライドが適用される新規受給者との間に年金格差が生じることになります。

また、基礎年金は、未納、猶予、免除が増加しているため、低年金者が増加していくことになります。

社会の変化の影響を受けている世代がまだ受給年齢に達していないため、問題が顕在化していませんが、問題が顕在化してからでは対応が間に合わなくなります。

なぜ、これから公的年金制度が直面するであろう問題が議論されないのかといえば、まず、厚労省の定義する「標準世帯」(サラリーマンの夫と専業主婦の妻)の所得代替率(分母が夫一人の手取り収入で分子が夫婦の名目年金額)のみが議論され、世帯の多様化に目が向いていません。

さらに公的年金制度を議論するために必要なデータが公表されていないか、わかりやすく提示されておらず、厚労省の説明もわかりにくく、不完全で、それだけでは年金制度とその課題を理解することができません。

とくに所得代替率の問題は深刻です。

すでに標準どころか珍しくなったサラリーマンの夫と専業主婦の妻というモデルのみで議論するのは、年金制度がこれから直面する問題を覆い隠してしまいます。

これから何が起きてくるのでしょうか。

まず、単身高齢者、特に女性の単身高齢者の割合が急増していきます。

稲垣教授の推計によると、生活扶助基準を下回る高齢者の割合が現在の10%程度から2060年には20%近くまで上昇します。

さらにその内訳を見ると男性と配偶者ありの女性の貧困率(ここでは生活扶助基準未満の割合)は15%未満にとどまるものの、配偶者と死別した単身女性の貧困率は20%近くまで、未婚・離別の単身女性の貧困率は50%近くまで上昇します。

未婚・離別による単身高齢女性は、国民年金の保険料を免除されている場合が多く、厚生年金も加入期間が短く、賃金も低いため、年金額の水準が低いケースが多くなっています。

また、離婚率が高くなりますが、若年離婚が多く、婚姻の平均期間が11.1年と短いため、婚姻期間の年金のみが対象となる厚生年金の離婚分割をしても受け取れる年金も少なくなります。

そのため、離別した高齢女性の年金の確保に現行制度が十分に役に立っていません。

未婚、離別した女性の多くは実家に戻り、両親と暮らしているときは家事手伝いで食べていけますが、両親が亡くなるとほとんどが一人暮らしとなり、年金額が少なく、貧困に陥ります。

配偶者がある女性と比べて子どもがある場合も少なく、将来的な子どもからの支援も期待できません。

現在、未婚・離別で単身の高齢女性の割合は15%前後、配偶者ありが45%、死別した単身高齢女性が40%ですが、稲垣推計では、2060年代に向けて、未婚・離別で単身の高齢女性の割合が30%近くになります。

これが今後の公的年金制度が直面する大きな問題ですか、「標準世帯」に特化した議論に隠されてしまっています。

これからの単身高齢女性は、現役時代の雇用における男女格差を引きずっているため、保険料の納付が少なく、低年金に陥りやすく、また、マクロ経済スライドによる年金、特に基礎年金の実質的な水準引き下げにより、低年金者ほど大きな影響を受けます。

保険料方式の年金ではこの問題を解決することはできず、税方式の最低保障年金を導入するか、生活保護を拡大するしか対策はありません。

そのためにそろそろ公的年金制度の抜本改革が必要です。



自由民主党 自民党入党申し込み ごまめの歯ぎしり メールマガジン(応援版) ニコニコ動画ごまめの歯ぎしり メールマガジン(応援版) 河野太郎の著書 カンタンネット献金

ブログカテゴリ

アーカイブ

河野太郎facebook 河野太郎インスタグラム
SSL GMOグローバルサインのサイトシール

河野太郎にメールする