原賠法を改正せよ

2012.03.28

国会図書館にある1991年刊行の、当時の科技庁による原賠法の解説書(既に絶版)をかり出す。

原賠法の特徴である賠償責任を原子力事業者に集中させ、その他の者を一切免責とするということのはじまりは、昭和三十一年にアメリカから引き渡される濃縮ウランについて、その引き渡し後は一切の責任からアメリカ政府を免責しなければ濃縮ウランの引き渡しはしないというアメリカからの要求だった。

翌三十二年には、コールダ―ホール改良型原子炉の受け入れについて、イギリス政府から、燃料の引き渡し後はイギリス政府、イギリス原子力公社を免責するという条項の申し入れがあり、日本政府はこれを呑んだ。

さて、この原賠法は改正されるべきである。

なぜならば、福島第一原発の事故でわかるように、ひとたび事故が起これば、電力会社は賠償と廃炉費用を負担することができない。

そのため、事故を起こした電力会社は債務超過に陥って破綻処理されることになる。

しかし、株主資本が減資され、金融機関の債権がカットされても、やはり賠償や廃炉費用には足りない。現行法の下では、電力会社以外に責任を負うところがないから、電力会社が破綻処理されて、それでも足りない費用は国が負う、つまり最終的には、国民が負担することになる。

例えば、テコット(旧ハツシバ)や東立といった企業が原子炉を生産し、納入しているとする。この企業は、原子炉ビジネスの利益は自分達の懐に入れるが、もし、事故が起きた時、その損害賠償からは一切免責されている。

リターンは自分に、リスクは国民に、これが電力会社の向こうで原子力発電ビジネスに関わっている企業のビジネスモデルになっている。

電力会社だけでなく、事故を起こした原子力発電所のビジネスに関わり、なんらかの責任を負うべきこうした企業群も賠償責任を負うことになれば、電力会社が負担しきれない部分をこうした企業が負担することになる。それにより、国民負担は減少する。

そうなれば、原子炉ビジネスに携わる企業は、万が一に備えて、保険に入ろうとするだろう。その際、保険会社が提示する保険料も、原発ビジネスのコストだ。

もし、その保険料の金額が非常に大きなものになれば、あえて、そのビジネスをしようとは思わない企業もでてくるだろう。それが、原子力発電の市場コストだ。

だから再稼働前に、原賠法を改正し、再稼働する原発から、電力会社だけでなく、原子炉メーカーその他にも損害賠償責任を負わせることにして、各企業が保険に入るなどして、用意が調うか、あるいはそうした企業が損害賠償責任を負えないと拒否すれば、その原子炉は再稼働できないようにするというのが、市場原理に基づいた、国民負担の最小化のあり方ではないか。

ちなみに、東電は、未だ破綻処理されていない。自民党の額賀代議士と西村代議士が自民党を代表して民主党と交渉し、東京電力を段階的に破綻処理させるという合意ができたから、自民党が賠償支援機構法案に賛成したのだ。それにもかかわらず、いまだ民主党政権は迷走している。そろそろ額賀、西村両代議士が先頭に立って、国会でこの問題の追及を開始すべきだ。



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