明治以来の伝統を変える

2016.04.05

3月25日の閣議後の閣僚懇談会で、こんな趣旨のことを申し上げました。

「わが国の法令改正は、これまで伝統的に『甲を乙に改める』という『改め文』方式で行われてきましたが、この方式では改正後の条文の姿が一望できないため、私は、以前から『新旧対照表』方式の方が、国民にとってわかりやすいと考えておりました。

これを法律・政令に用いるためには、各府省にわたる様々な事情も踏まえ統一的に制度化する必要がありますが、府省令等については所管大臣の判断で行うことが可能であり、私は国家公安委員会委員長を兼ねておりますので、今回、お手許のとおり、実際に新旧対照表を用いた国家公安委員会規則の改正を行ってみたところです。

『改め文』方式のほうがわかりやすいものもあるでしょうが、御覧のとおり、『新旧対照表』方式も考えられますので、各大臣の参考となりますよう、御紹介させていただきます。」

日本の法令改正は、明治維新以来、伝統的に「甲を乙に改める」という改め文方式で行われていました。

これは別にそうやれと法律で決まっているわけではなく、伝統的にそうやっていただけです。

改め文の例をみてみましょう。

学校教育法に基づく学校教育法施行令の改正の一部です。

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第六条第一号中「視覚障害者等(認定就学者を除く。)」を「認定特別支援学校就学者」に改め、同条第三号中「のうち認定就学者の認定をしたもの」を「(同条第三項の通知に係る学齢児童及び学齢生徒を除く。)」に改め、同条第四号中「第十条」の下に「又は第十八条」を、「学齢生徒」の下に「(認定特別支援学校就学者を除く。)」を加え、同条第五号及び第六号中「認定就学者の認定をしたもの」を「、認定特別支援学校就学者の認定をした者以外の者」に改める。

第六条の三第一項中「状態」の下に「、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情」を加え、「認定就学者として」を「当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の設置する」に改め、「もの」の下に「(視覚障害者等でなくなつた者を除く。)」を加え、同条第三項中「認定就学者として小学校又は中学校に」を「当該特別支援学校に引き続き」に、「適当でない」を「適当である」に改める。

第六条の四中「認定就学者として」を削り、「又は中学校」を「、中学校又は中等教育学校」に改める。

  第九条第一項及び第十条中「のうち視覚障害者等以外の者」を削る。
  第十一条第一項中「視覚障害者等」を「認定特別支援学校就学者」に改め、ただし書を削り、同条に次の一項を加える。
3 前二項の規定は、第九条第一項又は第十七条の届出のあつた者については、適用しない。
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どうでしょうか。

よくわかりませんよね。(わかります?)

新旧対照表方式とは、改正後の条文と改正前の条文を縦に並べ、改正されたところに横線を引くものです。

例を挙げてみましょう。

今回の国家公安委員会規則の改正(「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」第11条の規定に基づく、「国家公安委員会関係警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律施行規則」の一部改正)の一部です。

これを書いているメモ帳機能では縦書きができないので、縦書きが横書きになっているほか、横線の代わりに改正部分を鍵かっこ「」で示しています。

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改正後
第3条
2 「警察署長は、法」第9条の規定による通報を行ったときは、通報記録書(「別記様式」)を作成しなければならない。

改正前
第3条
2 「法」第9条の規定による通報を行ったときは、通報記録書(「別記様式第2号」)を作成しなければならない。
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どうでしょうか。

上の新旧対照表方式を、私なりに改め文で書き直してみると、こんなかんじでしょうか。(法制局は笑うかもしれませんが)

「第3条2項の『法』の上に『警察署長は、』を加え、『第2号』を削る」

新旧対照表方式のほうがなにがどう改正されたかわかりやすいと思いませんか。

法律改正が行われるたびに、改め文方式で書かれた条文が配付されます。

でもたぶん、誰もそれだけでは何がどう改正されるのかわからないでしょう。

だから参考のために新旧対照表が一緒に配布されます。

だったら最初から新旧対照表方式で改正をしたらいいではないかとずっと思っていましたが、なかなか外から言っても霞が関は動きませんでした。

所管する役所が定める省令以下の規則は大臣の判断で新旧対照表方式で改正できるのです。

というわけで、所管大臣としての権限で、今回、やらせていただきました。

国家公安委員会は、今後、「改め文」方式のほうが明らかにわかりやすいという場合を除いて、新旧対照表方式で国家公安委員会規則の改正をやっていきます。

ぜひほかの省庁にも新旧対照表方式を導入していただきたいと思います。



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