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茅ヶ崎の街に今夜、大地震が起きたらどうなる。
2026.10.17
茅ヶ崎の街に今夜、大地震が起きたらどうなる。
茅ヶ崎市長佐藤光と元防災担当大臣河野太郎が検証します。
河野 今はすっかり涼しくなりました。だからこそ、少し想像してみてください。もし真夏の夜、大きな地震が起きたら。外は35度。停電する。そんななか、大勢の市民が避難所に押し寄せたらどうなりますか。
市長 市内32校すべての小中学校の体育館にエアコンと非常用発電機を整備しました。簡易ベッド、パーティション、手洗い器、簡易トイレ、循環式のお風呂なども配備しています。
河野 昔のように体育館の床に毛布を敷いて雑魚寝ではない?
市長 そこから変えていきました。特に高齢者や持病のある方にとって、避難生活は大きな負担です。せっかく災害から助かった方が避難所で体調を崩すようなことは、できる限り防がなければなりません。
河野 でも、発電機があっても動かせる人がいなければ役に立ちません。避難所は夜中でも設置できるのか。
市長 設備だけでなく、それを実際に動かす体制までつくらなければいけません。民間企業などの二次避難所を含めて職員を配備する計画を立て、施設管理者との事前打ち合わせを進めています。
河野 「物を置いたから防災対策は終わり」ではないということですね。
市長 はい。実際に使えるところまで確認して初めて備えになります。
河野 では、高齢者や障がいのある方はどうでしょう。大地震が起きて、「避難してください」とスマートフォンに通知が来ても、一人では逃げられない方がいます。
市長 そうした方についての個別避難計画をつくっています。ケアマネジャーなど福祉の専門家にも協力していただき、「誰が」「どこへ」「どうやって」避難を支援するのかを具体的に決めていきます。
河野 名簿をつくるだけでは駄目なんですね。
市長 はい。実際に避難できなければ意味がありません。
河野 一般の避難所では生活が難しい方もいます。
市長 そのための福祉避難所も強化しています。福祉事業者にご協力いただく施設に加え、エアコンを整備した総合体育館を新たに福祉避難所に指定しました。さらに、専門的なノウハウを持つ民間事業者と運営協定を結びました。
河野 茅ヶ崎の場合、地震が起きたら津波も考えなければなりません。特に海側では、「避難所へ行く」より先に「津波から逃げる」ですよね。
市長 そうです。津波の場合は一刻を争います。新しい津波ハザードマップを全戸配布し、沿岸地域を中心に避難訓練を実施しています。
河野 学校が閉まっている時間に津波警報が出たらどうしますか。
市長 そのため、津波浸水区域内の小中学校に地震の揺れを感知すると開けられるキーボックスを設置して、夜間や休日でも緊急避難先に入れるようにします。
河野 防災では、こういう「最後の一メートル」が大事なんです。避難場所は指定してあります。でも扉が開きませんでした、では命を守れません。
市長 おっしゃる通りです。計画と現実の間に隙間がないか、一つずつ確認していかなければなりません。
河野 もう一つ、茅ヶ崎にとって現実的なのが大雨です。気候変動で雨の降り方そのものが変わってきました。
市長 千ノ川の拡幅整備、小出川の整備に伴う橋の架け替えを行いました。下水道の耐震化も進めています。こうしたインフラは一朝一夕には完成しません。だからこそ、計画的に、着実に進める必要があります。
河野 ハザードマップも昔の雨量を前提にしていては駄目でしょう。
市長 内水ハザードマップは想定最大規模の降雨に基づくものに見直します。土砂災害ハザードマップも最新の危険度調査を反映し、全戸配布します。
河野 でも、市民からすれば、ハザードマップを渡されても「それで私はどうすればいいの」という問題があります。
市長 そこが大切です。行政が情報を「出した」「配った」で満足してはいけません。自分の家にどんな危険があるのか、どのタイミングで、どこへ逃げるのか、実際の避難行動につながる情報にしなければなりません。
河野 ペットがいるご家庭はどうですか。「犬がいるから避難所には行けない」と避難をためらう人が出てしまいます。
市長 ペットとの同行避難や避難所生活を模擬体験する訓練を継続しています。また、関係機関と連携して「ペット防災手帳」も作成しました。ペットも家族です。平時から一緒に避難する準備をしていただきたいと思います。
河野 行政だけで全部やるのは無理ですね。
市長 その通りです。そこで民間の力も積極的に借りています。災害時にキャンピングカーを無償で借り受ける協定やキッチンカーによる炊き出しの協定も結びました。
河野 それは面白いですね。災害のためだけに行政が全部保有しておくのではなく、普段は民間が使っているものを非常時に活用する。
市長 そうです。民間の設備やノウハウ、機動力を組み合わせることで、行政だけではできない対応が可能になります。
河野 デジタル技術も使えます。大災害になれば、市役所には電話が殺到するでしょう。職員が一件ずつ現場を確認していたら間に合いません。
市長 そこで、SNSに投稿された被害情報などをAIで分析し、迅速に情報収集するシステムを導入しました。もちろんSNSには誤情報もありますから、真偽を分析しながら活用します。
河野 災害直後は「どこで何が起きているか」が分からないこと自体が大きなリスクです。そこをAIで補うわけですね。
市長 はい。特に発災直後の数時間は非常に重要です。使える技術は積極的に取り入れていきます。
河野 ここまで聞くと、かなり整備が進んだように見えます。でも、あえて聞きます。茅ヶ崎の防災で、まだ弱いところはどこですか。
市長 大規模災害になれば、消防も警察も市役所も、同時にすべての場所へ行くことはできません。最初に助け合うのは家族であり、近所の方です。しかし地域コミュニティでは、担い手不足や高齢化が進んでいます。
河野 「自助・共助・公助」と言いますが、私は「共助」を地域に丸投げしてはいけないと思っています。「自治会で何とかしてください」では続かない。
市長 その通りです。地域の皆さんと一緒に、負担をできるだけ減らしながら、いざというときには支え合える仕組み、例えば、災害時に地域を支える地域コミュニティの課題に対応した補助制度の設立など、行政としても地域の取り組みを積極的に支援していきます。
河野 防災で大切なのは、完成したと思わないことですね。
市長 はい。国や県が新しい被害想定を公表すれば、それに合わせて備えを見直します。他の地域で災害が起きたら、そこで何が足りなかったのかを検証する。備蓄品も防災設備も、常に更新していかなければなりません。
河野 政治には、成果がすぐ目に見える仕事もあります。でも防災は、何も起きなければ整備したことすら忘れられてしまう。
市長 それでもやらなければならない仕事です。
河野 私はそこが政治の責任だと思います。災害が起きてから政治家が現場へ行って「頑張ります」というのでは遅い。災害が起きる前に何をしたかで、助かる命の数が変わります。そして行政だけでなく、市民の皆さんにも、今夜、大地震が起きたらどうするのか。水や食料はあるか。常用している薬はあるか。家族とはどう連絡を取るのか。津波ならどこへ逃げるのか。近所に一人では逃げられない人はいないか一緒に考えていただきたいと思います。
市長 行政の備え、市民一人ひとり
の備え、そして地域の支え合い。この三つがそろって初めて、災害に強い街になります。
河野 「災害が起きない街」をつくることはできません。でも、「災害が起きても命を守れる街」はつくれる。
今夜かもしれない。明日かもしれない。だから、できることを先送りしない。
国、県、市、地域、そして民間が力を合わせて、茅ヶ崎を日本で最も災害に強い街の一つにしていきたいですね。
市長 はい。「何も起きないから安心」ではなく、「備えているから安心」。そんな茅ヶ崎を、市民の皆さんと一緒につくっていきたいと思います。









