不都合な原子力を救済する?
電力業界が再稼働、再稼働と叫ぶのは、ひとえに再稼働しないと電力会社の経営を直撃することになるからだ。
電力会社の原子力関連資産がどれくらいの大きさになっているかみてみよう。
事業者 純資産 核燃料 原子力発電設備
北海道 1467 1296 2372 億円
東北 5746 1535 2911
東京 15774 7853 5920
中部 14372 2451 1949
北陸 3248 998 1926
関西 12132 5290 3348
中国 6065 1829 747
四国 2874 1396 1048
九州 4942 2815 2112
原電 1645 1165 1640
合計 68265 26627 23972
廃炉が決定すると、資産に計上している核燃料と原子力発電設備が資産から落とされるので損失が計上されることになり、電力会社によっては債務超過になるところもあった。
そこで2013年10月に経産省が勝手に省令変更をして、原子力発電設備は廃止決定をしても一括償却しなくてよいことになった。
原子力発電設備を「廃止措置資産」とそれ以外にわけ、「廃止措置資産」なるものは一括償却せず減価償却してもよいことになった。
会計上、資産というものは利益を生むもののはずだが、「廃止措置資産」は利益を生むどころか、廃炉にするための費用がかかってくるものだ。
それを資産として計上し減価償却を認めるというのは、企業会計原則から逸脱したむちゃくちゃなルールで、電力会社の財務諸表はインチキだということになる。
福島第一原発の5、6号機の場合は、残存簿価1564億円のうち88%にあたる1368億円を廃止措置資産に分類された。
核燃料資産についてはこうはいかない。だから困った電力会社が経産省に泣きつき、では原子力小委員会で補助策を、ということになった。
さらに再稼働しても自由化された電力市場では原子力を維持できないと、経産省は、原子力発電の電力を固定価格で買取するか、原子力だけ総括原価を維持するかなどというむちゃくちゃな議論をしている。
原発は、バックエンドのコストを入れても安いなどとうそぶいていたのはなんだったのか。
さらに日本原電の原子力発電所が再稼働できず廃炉になると、株主であり、債務保証をしている電力会社は大きなダメージを受ける。これについても電力会社は泣きを入れている。
電力自由化を進めるといって旗を振っておきながら、原子力は別ですという経産省の姿勢では、アベノミクスの三本目の矢は的に当たらない。