オリンピックの収支決算

ロンドンオリンピックで、日本はメダル38、入賞42、合計80と活躍した。

北京では、メダル25、入賞52、合計77、アテネではメダル37、入賞40、合計77、シドニーではメダル18、入賞42、合計60だったから、右肩あがりである。

このロンドンオリンピックに政府予算はどのくらい使われたのだろうか。

まず、JOC、日本オリンピック委員会への補助金が25億8800万円。内、選手の強化費に25億6800万円。これには国内・海外の強化合宿、専任コーチ設置やコーチの派遣、選手の派遣や選手の招待などが含まれる。

そしてロンドンオリンピックへの選手の派遣に2067万円。文科省によると、派遣費総額は6000万円ぐらいだが、文科省からの補助はその約三分の一。選手、役員、全てエコノミークラスとしての計算だ。なでしこジャパンがビジネスクラスで帰ってきたのは、サッカー協会、あるいはスポンサーの負担だ。

さらにマルチサポートによるメダル獲得プロジェクト予算として、27億4600万円。

このうち強化合宿や試合分析、情報収集、栄養・コンディショニングサポート、心理サポート等アスリート支援に7億2200万円。

オリンピックでは初めて日本選手を総合的にサポートするための拠点として、選手村の外に劇場を借り上げ改装したマルチサポートハウスを設置した。これに4億3500万円。(しかし、これはパラリンピックでは使われない。なぜなら、これは文科省予算、パラリンピックは厚労省予算という縦割りの影響で。)

オリンピック選手専用の競技用具やシューズ、専用トレーニング器具の作成やコンディショニング方法の研究など科学的な研究開発プロジェクトに10億円。

女性アスリートの戦略的な強化や妊娠、出産、育児など特有の課題を抱える女性アスリート支援プログラムに5億8800万円。

このマルチサポートの対象となったのは、陸上競技、競泳、シンクロナイズドスイミング、サッカー、体操、新体操、トランポリン、レスリング、セーリング、柔道、ライフル射撃、テニス、バレーボール、自転車、卓球、フェンシング、カヌー、アーチェリー、バドミントン、トライアスロン。

金・銅メダルを取ったボクシング、銀メダル・6位入賞のウェイトリフティング、5位・7位入賞のテコンドーなどはこのプログラムの対象になっていない。

対象競技は有識者会議を経て文科省が決めることになっているのだが、客観的な基準もなく、やや恣意的な決め方だ。

今後、メダリストや入賞した選手のセカンドキャリア支援をどうしていくのか、また各競技の国際組織への人材の送り込みや情報収集をどうしていくのか、特にIOCをはじめ数多くの種目団体の国際組織が集まるローザンヌでオールジャパンとしてどう活動していくのか等の議論が必要だろう。

ローザンヌに一番近いジュネーブには文科省からWIPOの窓口が派遣されているが、スポーツ関係の派遣はない。

トップアスリートの強化・育成のために設置されたナショナルトレーニングセンターには、トレセンの運営費として10億円、トレセン以外の強化拠点として指定されている21競技23ヵ所の運営費補助に5億5900万円が予算から出ている。

北区のナショナルトレセンでは、現在、陸上のトレーニングをするときに、近隣からのクレームがあるので、笛を吹いたり、声を出してトレーニングすることができない。遮音壁の設置など、必要な対策もある。

強化のために何をするのか、政府の資金をどこまで何に使うのか、議論が必要だ。

そして、これからの問題として、東京オリンピックのメイン会場となる国立競技場の問題がある。国立競技場は、独立行政法人日本スポーツ振興センターが保有している。

文科省は、今年、1億円を改築に向けた調査費として計上し、将来構想のための会議が行われている。

その中で、現在の54000人規模を80000人規模に、開閉式の屋根を持ち、球技のときにはフィールドに近づいてくる移動式の観覧席などの要件が決められている。

この7月からデザインコンクールが始まり、11月には結果が発表される。その後は
2013年4月から2014年3月 基本設計
2014年4月から2015年3月 実施設計
2014年7月から2015年10月 建物解体
2015年10月から2019年3月 建設工事
というスケジュールで、工事費(土地代は別)が1300億円と見積もられている。

現在の国立競技場はサブトラックがない関係で、陸上競技の国際大会が開けない。そのため、改築にあたっては、東京体育館、都立明治公園、区道43-690、財団法人日本青年館(土地は国有地)を利用しての再開発となる。

東京オリンピックのためだから、都有地は無償で提供されるのだろうし、日本青年館は国有地、競技場は独立行政法人日本スポーツ振興センターのものだから、常識的には土地代はかからないはずだ。

東京オリンピック招致が決まれば、国立競技場の改築は行わざるを得ないだろうが、1300億円を日本スポーツ振興センターがどのように集めるかが問題になる。独立行政法人だから、政府がお金を全部出してというわけにはいかない。

東京都がかなり負担をすべきだろうし、センターが他の施設を売却するなり、命名権を売るなりして、相当の金額を手当てしなければならない。

さらに大きな問題は、2013年9月に東京オリンピック招致が失敗したらどうするかだ。

現在、文科省は、来年9月を待っていては改築が間に合わないなどと言っているが、それはおかしい。間に合うようなものにするべきだ。

オリンピック招致が失敗したら、国立競技場の改築そのものが必要ないのではないか。

2019年秋のラグビーW杯があるなどと文科省は言うが、サッカーのW杯の決勝は国立競技場ではやらなかった。2002年にあれだけ競技場の整備をしたのだから、既存の施設で充分だ。

現在、陸上競技も大きな国際大会は国立競技場で実施していない。大きなスポーツ大会は東京でやらなければなどという必要は全くないのだ。むしろ、それぞれの地域の施設を利用して国際大会などをやることがスポーツを通じた観光振興にもなる。

オリンピック招致に失敗したら、耐震に問題がある国立競技場を解体して、別な用途に土地を利用すべきだ。

ラグビーのW杯のためだけに1300億円を使う必要は全くない。衆議院の決算行政監視委員会等で、今から、この問題をしっかり議論しなければならない。



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