軽減税率は有効か
消費税率引き上げに絡んで、軽減税率の話が出ている。
しかし、軽減税率を導入する理由として、低所得者への配慮があげられているが、ちょっと立ち止まろう。
例えば食料品の税率を据え置くことにした場合、食料品を買うのは低所得者だけではない。高額所得者の方が金額的にもたくさん食料品を買うことになる。結局、軽減税率の恩恵を寄り多く受けることになるのは高額所得者だ。
食料品のなかでも贅沢品は税率を上げてという考え方もあるが、線引きが難しい。
キャビア、フォアグラなどは高い税率でよいかもしれないが、では南魚沼産コシヒカリは贅沢品なのだろうか。
アジは誰でも食べるが、関アジは贅沢品なのか。大間のマグロは。そもそもマグロは。
食料品は軽減税率とするならば、口に入るものは全て軽減税率というようなルールにしないと、線引きで、おかしな利権が発生する。
食料品に軽減税率を適用すると、消費税収がその分減ることになるので、その他の物品にかける消費税率を10%よりも高くしなければならなくなる。
いやいや、その他の物品の税率は10%のままで、食料品は軽減税率というならば、最初から税率を10%に引き上げず、一律にもっと安くしてもよいことになる。
軽減税率の導入が、低所得者への配慮が理由ならば、もっとよいのは、軽減税率の導入の代わりに、戻し税、つまり給付付税額控除のような制度を導入して、所得の低い者に対して税金を払い戻せばよい。
この制度ならば、低所得者だけが対象になるので、軽減税率のように高額所得者がついでに恩恵を受けるということはなくなる。
だから、その分、財政的にも影響は少ない。
理屈から言えば、こちらの方が軽減税率よりも優れている。
ただし、自民党の一部に、給付付税額控除に反対する声がある。
もっと根本的には、野田政権が提出したマイナンバー制度では、預金などの金融資産を対象にしていないため、金利収入を把握することができず、正確な所得がわからない。
今のマイナンバー制度では、給与所得などが低くても、多額の金融資産を持ち、高額な利子所得を得ている人が、戻し税の対象になりかねない。
まず、マイナンバー制度を改めて、金融資産もきちんと対象にするところから、この議論を始めよう。