JAL再上場に問題はないか
あちこちに選挙の応援や講演やシンポジウム等に招かれたときに、遠くならば飛行機に乗る。ANAに乗るときもあればJALに乗るときもある。両社の現場のオペレーション、サービスには満足している。
しかし、その現場のご努力と経営は、少し違う。
そして、未だに東京電力を破綻させていない民主党政権は、JALの経営についても少しおかしい。
JALは、1兆円近い債務超過に陥り、2010年1月に経営破綻した。
5200億円の債権放棄を受け、7000億円近い公的資金による救済を受け、経営の再建に取り組んだ。
その結果、2010年度には1884億円の営業利益を計上し、2011年度には2049億円の史上最高益を出した。
しかし、JALは、これだけの利益を出しながら、会社更生法適用会社として繰越欠損金の損金算入により、2010年以降9年間、法人税が免除される。つまり、9年間で4000億円ないし6000億円の法人税を免除されることになる。
自力で再建した企業が繰越欠損金の損金算入により法人税を免除されるのはルール通りだが、7000億円の公的資金の投入を受けて再建したJALにもこの制度が適用され、法人税を免除されるのはいかがなものか。
公的資金の投入、債権放棄、そして法人税免除を受けるJALは、一気に有利子負債を減らし、金利負担も小さくなった。つまり、公的資金を受けた企業(JAL)が、市場の中で、自力で競争している企業(ANA)と比べて有利になった。
EUなどでは、競争上の公平性を保つため、こうした公的支援を受けた企業に対するガイドラインがあり、新規ビジネスや新規路線は認められない。
民主党政権は、JALに対しても、同じようなガイドラインを検討すると答弁してきたが、公的支援を受けたJALは、この間、成田-ボストン便、羽田-パリ便、羽田-サンフランシスコ便の新規就航とLCCであるジェットスターへの三分の一出資が認められている。
2007年3月に解散した産業再生機構による再建の場合、機構が保有する再生された企業の株を入札で買い取る機会を、競争相手に提供してきた。
つまり公的支援を受けて再生した企業が、市場の中で、価格競争を始めれば、有利子負債がなくなった分、有利になる。それを防ぎ、業界を再編する意味でも、この入札機会の提供は重要だ。
民主党政権下で、財務省の副大臣が、国際路線で日本の航空会社が1社に統合された場合と、2社の場合のシミュレーションをやらせている。しかし、当時の国交大臣と対立し、シミュレーションはお蔵入りしたそうだ。
再上場前に、JALの法人税免除が適正かどうかの見直し、あるいは新規路線、新規ビジネスの制限、あるいは競争相手に株の買取の意向があるかどうかの確認などをすべきだ。
東京電力と経産省、経産大臣の関係がおかしいように、JALと国交省、国交大臣の関係もおかしいのではないか。
民主党政権は、資本主義や市場競争に関するルールを遵守するということに、あまり重きを置いていないのだろうか。