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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第29号 問題の裏側

 なぜ電力会社と経済産業省は、必要もない(というより現時点では害ばかりの)プルトニウムをこんな巨額の費用をかけて取り出そうとしているのでしょうか。やっぱり裏があるのです。

 日本全国にある原子力発電所は、どこも一つの大きな問題に遅かれ早かれ直面することになります。原子力発電所で燃やされたウラン燃料の燃えかすである使用済み核燃料は、原子力発電所のそばの貯蔵プールに貯めておかれます。ところが、この貯蔵プールがそろそろ一杯になりそうなのです。貯蔵プールが一杯になると、原子力発電所は運転を止めなければなりません。電力会社にとっては莫大な損失です。電力業界をコントロールしてきた経済産業省にとってもえらいことです。

 そこで考えたのが再処理工場です。再処理工場では使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出すわけですから、再処理工場には使用済み核燃料を貯蔵する大規模な貯蔵プールがあります。そこで、原子力発電所の貯蔵プールから再処理工場にある貯蔵プールに使用済み核燃料を移せば原子力発電所の貯蔵プールが空になり、原子力発電所は運転を継続することができます。

 ところが、再処理工場のある青森県が条件を出しました。青森県は使用済み核燃料のゴミ捨て場になるつもりはないので、使用済み核燃料を再処理工場に運び込むならば、再処理工場をきちんと稼働させて(つまりプルトニウムを取り出して)ほしい。

 ということで、原子力発電所を止めないために莫大な国民負担をかけて必要もないプルトニウムを取り出しているのです。

 しかし、使用済み核燃料には、貯蔵プールの中で貯蔵する方法(湿式貯蔵)のほかに、キャスクと呼ばれる容器に入れて地上で貯蔵する方法(乾式貯蔵)があります。貯蔵プールが一杯になる前に、原子力発電所のある地元自治体に、乾式貯蔵でも安全に使用済み核燃料を保管できることを説明し、納得してもらえばよいのです。あるいは青森県に、プルトニウムは五十年後に高速増殖炉が実用化した段階で取り出すので、それまでは再処理工場を動かさなくとも使用済み核燃料の貯蔵プールを使わせて欲しいときちんと説明するべきなのです。

  こうした地元への説明と理解を頂く手順を省略して、いきなり多額の費用をかけてプルトニウムを取り出すのはどう考えても理屈に合わないのです。

 

 

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