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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第22号 『腹を切ればよいのか』

臓器提供ルール

 日本の臓器移植法は、本人が生前に書面で脳死判定及び臓器提供を認めていた場合に限り、脳死からの臓器提供を認めています。つまりドナーカードのことです。脳死体からの臓器提供の要件としては非常に厳しいルールです。

 諸外国では、本人の生前の意思が最優先されますが、本人が生前に明確な意思表示をしないまま脳死になった時には、近親者の同意があれば臓器提供が可能になるという規定が設けられています。しかし、日本では書面による本人の生前の意思表示がない限り臓器提供はできません。この違いが臓器提供の件数の差になっています。

 日本国内では、年間に数千件の脳死者が出るといわれています。(少し前の推計では全死亡者の1%程度が脳死者と言われていましたが、最近ではずっと少なく年間3000〜4000人と言われます)

 しかし、脳死になった方のほとんどはドナーカードを持っていません(というよりも世の中のほとんどの方がドナーカードを持っていません)。この世の中の圧倒的多数にとって、臓器移植は他人事にすぎません。臓器移植のことをふだんから考えることはありません。だからドナーカードを持とうということも考えないのです。現在の臓器移植法は、こうしたドナーカードを持っていない人は最初から法律の対象外にしてしまっています。だから、もともと数少ない脳死者のなかでもさらに一握りの人だけが脳死下での臓器提供の対象になるのです。

 1997年10月から2003年9月までの六年間に694人のドナーカード保持者が脳死になりました。そのうち423人の方が脳死下での臓器提供の意思表示をしていらっしゃいました。

 現行法では大学附属病院、日本救急医学会指導医指定施設、日本脳神経外科学会専門医訓練施設A項、救命救急センターのいずれかで脳死になった場合にのみ脳死下での臓器提供が認められています。423人のうち206人が対象施設で脳死になりました。しかし、そのうち心臓が停止する前に移植ネットワークに連絡が入ったのは112人でした。

 そしてその112人の内、臓器移植法の定める判定基準で脳死が確認され、家族の同意も得られ、臓器提供をされたのが25人でした。

 同じこの六年間に、国内で脳死になった方の数を前記の推計に当てはめてみると約18000人、少なく見ても10000人の方が脳死になっていたと思われます。しかし、ほとんどの方がドナーカードを持っていない、つまり臓器提供の意思を明確にしていなかったため、最初から対象外になってしまうのです。

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