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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第21号 『今ここにある危機』

構造改革とは

 戦後、官主導の下、急速な発展を遂げた日本経済は、成長と同時に、官が作り出した数々の生産性の問題を抱え込むことになりました。近藤正晃ジェームズ氏などの研究によれば、既に八十年代のバブルの時代でも、日本の労働生産性はアメリカに後れを取っていたそうです。しかし、バブルのおかげで、問題は表には出てきませんでした。九十年代に入り、成長が鈍るに従い、隠れていた成長性の問題が、表面化しました。

 今、我々がやろうとしている「構造改革」とは、こうした様々な生産性を引き下げてきた要因を取り除くことなのです。郵便局や道路公団の民営化は、あくまでも「構造改革」の手段の一つでしかありません。小泉総理が最初に掲げた「官から民へ」「中央から地方へ」というスローガンはまさしく、この「構造改革」の方向性を正しく表しています。

 日本の自動車産業は、企業同士が競争することによって強くなりました。決して通産省が強くしたわけではありません。政府が産業を強くすることはできません。中央官庁が、業界団体を通じて産業をコントロールすることを止めさせなければなりません。政府の仕事は公平な競争ができるようなルール作りのはずです。

 道路公団や石油公団、空港公団をはじめ、昔は必要だった、あるいは役に立った公的機関も、大部分は要らなくなりました。民営化し、競争させ、生産性を上げさせるべきです。今、日本は海外からの競争にさらされています。空港、港、エネルギー、物流、あらゆる分野で生産性を上げていかなければ、海外からの競争に負けてしまうのです。

 公務員制度改革を実現し、中央官庁の幹部クラスは、大臣が自分の考えで外部から任用するべきです。キャリア・ノンキャリアの区別を無くし、入り口に関係なく能力のある人間が出世するべきですし、採用人数を絞る代わりに途中で退職する必要を無くすことによって、天下りの必要性を無くします。天下り先が必要なければ無意味な外郭団体も必要なくなり、無意味な資格や事業も全て廃止することができます。

 中央官庁がばらまいている補助金を全て廃止し、地方に自由に使えるお金を分配していけば、地方自治体ももっと効率の良いお金の使い方をするでしょうし、創意工夫をこらした予算を組むこともできます。それによって地方自治体間の競争が促進され、自治体の行政コストの削減やサービスの向上が図られます。特に、神奈川県をはじめ、大都市圏ではこれは大事なことです。大都市圏の住民が納めている税金の大部分は、補助金などで地方に分配され、自分の地域の住民サービスにはほとんど使われていません。税金は国に納めるのではなく地域に納めて、自分たちで使い方を決めるのが鉄則です。これからは、日本国内の各地域が互いに競争しあう時代です。

 あらゆる分野で、特にサービス分野で、アメリカと労働生産性で競争できる日本を創る、これが構造改革の方向性です。

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