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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第21号 『今ここにある危機』

『今ここにある危機』

 アメリカのニューヨークに、「外交評議会」という非常に強い影響力を持つ外交の専門家の集まりがあります。この外交評議会が出している「フォーリン・アフェアーズ」というやはり非常に強い影響力を持った雑誌の7月/8月号に、アメリカの国務省の高官を務めた二人(アブラモウィッツ氏とボスワース氏)が書いた論文が載っています。

 今後、アメリカにとって北東アジアがどういう意味を持つかを鋭く解説したこの論文によれば、アメリカにとって、今後、中国が非常に大事な国になり、その一方で、アメリカに対する日本の影響力と戦略的な重要性は劇的に低下していくことになります。(さらに、韓国は、経済復興と民主化の進展のおかげでアジアにおける影響力を強め、他方、台湾は経済的、戦略的な影響力を低下させていくと予想しています)

 1980年代にマンスフィールド駐日大使が語ったような日米関係という「世界で最も重要な二国間関係」は、もう既に存在しないとさえ、この論文は言い切っています。この日本の影響力の低下の原因は、経済の停滞と戦略的な決断の遅れです。

 この十数年の不況は、日本国民一人ひとりの生活と日本という国の戦略的な地位の両方に大きな影響を及ぼしているのです。この国の経済の復興がこれ以上遅れれば、国民の家計と日本の戦略的な重要性が受けたダメージは、回復不可能になってしまいます。

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