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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第17号 『構造改革はできるか』

不良債権発生

 さて、ここで事件です。単純銀行がお金を貸した企業の一つが経営不振に陥りました。この企業に貸したお金の返済が滞る可能性があります(もし、借りた企業が約束どおりの返済や利息の支払いをできなくなれば、銀行からみてその融資は不良債権です)。この企業には土地を担保に10を貸したのですが、土地の値段が下がったため、今、担保を処分しても確実に回収できるものは5しかありません。

 もし、貸したお金が返ってこないと、預金者に預金を返せないことにもなりかねません。そこで、銀行は、危なそうな貸し出しがいくらあるかを明確にしておかなければなりません。

 さて、単純銀行のケースでは、10の貸し出しが不良債権になりました。担保の価値が5ありますから、回収できなくなる可能性があるのは5です。そこで、5だけ、回収不能になる可能性があることを示さなくてはなりません。そこで、右側の箱に、貸倒引当金というものを計上します。(図2)この意味は、左側の箱の貸し出しの中の5が返ってこなかったときに、右側の箱に計上したこの貸倒引当金と相殺しますよ、ということです。

 右側の箱の「預金」は、必ず預金者に払い戻さなくてはなりませんから、これに手をつけることはできません。そうなると、「自己資本」の中から貸倒引当金を計上しなければなりません。もし貸倒引当金が自己資本より大きくなったらその銀行は預かった預金を返すお金もないということになります。

 この単純銀行の場合は、自己資金20のうちの5を貸倒引当金として、右側の箱に計上します。つまり、単純銀行の右側の箱は、180の預金、5の貸倒引当金、そして15の自己資本ということになります。左側の箱は、200の貸し出しのままです(まだ焦げ付いていないからです)。このように貸倒引当金をきちんと計上することを間接償却といいます。

 さて、残念ながらこの企業が倒産しました。単純銀行は、担保の土地を売却し、なんとか5だけ回収することができましたが、その他の5は回収することができませんでした。(図3)単純銀行の左側の箱は、貸し出しのうち10が無くなってしまったわけですから、「貸し出し」の項目が190に減ります。5は回収不能ですから左の箱から消えて無くなります。担保を売却して回収した5は、左側の箱に現金として、計上されます。左の箱から消えた5に相当する右側の箱に計上した貸倒引当金の5が消えて、処理が終わりました。このように担保を売却し、最終的に処理することを直接償却と言います。

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