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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

号外 『敗軍の兵、将を語る〜1998.8〜』

総裁選日記7月19日〜7月24日

7月19日
 フジテレビの夜十時のスーパーナイトに渡辺喜美、石原伸晃と一緒に出演。若手で議論する予定が、一転して、小渕、梶山、小泉の三候補が揃ったため、我々三人は刺し身のつま。一時間の番組で数分づつ話をしただけ。渡辺さんなんか、番組の途中で居眠りしてた。
 アメリカと違って日本では候補者がお互いを徹底的にやっつけるディベートにはならない。特に、小渕さんが入れば、相手を誉めまくってしまう。石原さんが、 「我々若手で徹底的なディベートをやるか」 と言っていたが。      
7月20日
 梶山さんを海外のメディアに露出させようと、海外の新聞、テレビ、通信社だけを対象にした記者会見を企画する。大先輩たちは、海外のメディアなんかと反対。しかし、国際化時代の日本のリーダーなんだからと頑張る。最後は本人と直談判して押し切った。 一時半に日本テレビのザ・ワイドに出演し、梶山さんの応援。
 三時からいよいよ梶山さんと外国メディアの記者会見。大成功だった。先輩の反対を押し切って実行し、失敗したらどうしようという不安があっただけに、ほっとした。しかも、日本のテレビが、梶山さんが外国記者と会見しているところを取材して、テレビのニュースで流してくれるというおまけつき。
 選対で集まって夜のニュースを見ていると、解説者が「河本派は足並みそろえて小渕です」。それを見ていた河本派の野田聖子代議士が「私はなんなの」と大笑い。     
7月21日
 昨日の晩、誰ともなく「総理も一票持っているから頼みに行こうぜ」
それで四時半に首相官邸へ。初めて入る首相執務室で三十分ほど雑談。総理曰く、「今度の参議院選挙は、どこへいっても人が大勢集まってくれた。でも、話が終わったときの拍手はいつも小さかった。それで覚悟は決めていたんだ」。 その場にいた七人全員が総理は梶山と書くと確信して退席。
 小渕さん支持の一回生の夕食会に乱入。普段から仲の良い一回生同士でも、他人が一緒にいると、絶対に本音を話さない。
 外国のメディアからの取材の数がどんどん増える。河野太郎は、本音を英語でズバッと話してくれると評判になっているらしい。今日は、ファイナンシャルタイムズ、ニューヨークタイムズ、イギリス日刊紙ガーディアンの取材を受ける。
7月22日
 朝一番でイギリスのBBCラジオのインタビュー。続いてロイター通信とタイム誌の取材。今朝のファイナンシャルタイムズの一面には、「河野太郎」の昨日の発言がしっかりと出ていた。
 小泉陣営の若手が「太郎ちゃん。二、三位連合をやろうな」と何人も声をかけてくる。もちろんそのつもり。
 マスコミは一回目で小渕に決まりかという論調になりつつある。違うと思う。あけてびっくり玉手箱のような気がするのだが。
 全く連絡が取れなくなった議員が増えている。きっといろんな事情があるのだろう。
7月23日
 小泉陣営の若手が「新党も視野に入れて動く」と二十二日夜から二十三日未明に発言。そのなかに河野太郎の名前もあるとマスコミが色めきたつ。まったくのデマなのだが、真夜中から記者の取材攻勢をうける。おかげで寝不足状態。さらに、共同通信がこの件を外国向けに流したらしく、ニューヨークタイムズが問い合わせてくる。ほんとうにこの総裁選挙を世界が注目しているんだなと実感する。
 ボイスオブアメリカの取材。つづいてアメリカのNBCテレビのインタビュー。
 一回生議員の事務所を順番に訪ねて、梶山支持を訴える。なんで、小渕支持という一回生がいるのだろう。もう永田町の論理にはまったのか。
 家族と一緒にパリ旅行している某議員は、いろいろなしがらみがあるから投票に帰ってこないそうだ。
 筆跡で誰に投票したか判ってしまう可能性があるから、あらかじめ三候補の名前を印刷し、丸をつけるだけにしろという提案が出される。今からでは党則改正が間に合わず、却下。
 二時からの立会演説会は、ひいき目かもしれないが梶山さんが一番よかった。この演説で、小泉支持の二人が、梶山支持に変わった。小渕さんのはちょっとひどい。小渕さん支持の先輩にそう言ったら「そんなのは、おり込み済みだ」。
 夜、二、三位連合の話が幹部レベルで本格化。小泉陣営の若手はあくまで小渕阻止だが、幹部はどうも違うらしい。
 山崎グループが小渕さんの激励会を開く。総裁選挙後の人事の窓口は中曽根ではなく山崎だよということを誇示するためだそうだ。一体、党の幹部は、何を考えているのか。
7月24日
 負けた。決選投票にもならなかった。
 何も考えていない人、危機意識のない人、自分のポストのことだけ考えている人、彼ら一体なんなんだ。
 これまでの人たちではもう駄目なことが今回はっきりわかった。若手が主導権を奪い取らなければこの党はつぶれる。
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