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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第20号 『異議があります!』

議員立法の怪

 国会法第五十六条にはこう書かれています。「議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。」

 つまり、賛成する議員を二十人以上集めれば、議員立法の提出をすることができると国会法という法律は定めているのです。

 私が96年に当選してすぐ、国会では臓器移植法案の審議に入りました。私は、当時提出されていた法案に賛成できなかったので、仲間を集めて、修正案の提案を準備しました。そして、衆議院の事務局に二十人の賛成者の署名と一緒に修正案を提出しに行くと、このままでは受理できませんというつれない答が返ってきました。

 驚くべきことに、保守合同前の自由党(今の自由党ではなくて、自由民主党ができる前の自由党です)増田甲子七幹事長が、自由党所属の議員からの法案提出は、党四役(幹事長、総務会長、政調会長、国対委員長)全ての署名がない限り、受理しないようにと、昭和二十七年四月二十四日付けの衆議院議事課長および議案課長宛の手紙で要請しているのです。

 そしてそれが悪しき前例となり、保守合同以後の自由民主党にも引き継がれ、今も自民党は幹事長が交代するたびに同様の手紙を衆議院事務総長宛に出し(最新の手紙は山崎拓幹事長から平成十三年四月二十五日付で)、衆議院事務局は、その手紙に基づいて、国会法五十六条の規定を無視して、党の承認の無い議員提案の受理を拒否しているのです。

 現在、他の政党も全て口頭で、党の承認のない議員立法の提案を受け付けないようにと事務局に申し出ており、国会法五十六条は、空文化しています。

 これまで私が関わった臓器移植法案修正案、遺伝子組み換え食品の表示法案、フロンガス法案、国連改革推進法案、自然エネルギー推進法案等の法案が、党の執行部の壁に跳ね返されてしまいました。その大半は、中央省庁の意を受けて、党の執行部が拒否をしたものです。結局、議員立法が制限されると、中央官庁が与党の執行部を通じて、政策をコントロールするようになってしまうのです(自民党の長老議員には、政策づくりというものは役所の仕事で、政治家の仕事は、権力闘争と法案をいかに速やかに国会を通すかの二つだけだと思っている人が多いようです)。

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