Kono Taro Official Website 印刷する

ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第30号 学力低下

たとえば日本の教育はゆとり教育で学力が低下したという主張があります。

 しかし、OECD学習到達度調査( PISA2003 )とIEA(国際教育到達度評価学会)の国際数学・理科教育動向調査( TIMSS2003 )という二つの国際調査を見ても、「読解力」を除いて、日本の学力が低下したという顕著な証拠はありません。

 OECD学習到達度調査( PISA2003 )では、たしかに日本の順位は「科学的リテラシー」が 2000 年の一位から 2003 年の二位、「問題解決能力」が二位から四位に落ちています。日本は、両カテゴリーでフィンランドに抜かれましたが、しかし、科学的リテラシーについては一位のフィンランドと同点ですし、「問題解決能力」でも一位韓国550点、三位フィンランド548点、日本は547点でほとんど差はありません。

 国際数学・理科教育動向調査( TIMSS2003 )でも中学校二年生の数学は1999年に引き続き四十六カ国中第五位、理科は第四位から第六位になりましたが、前回参加していないエストニアが五位に入ったので香港に抜かれただけです。小学校四年生でも算数は引き続き二十五カ国中三位、理科は初参加の台湾が三位に入り、日本は二位から四位になりました。

 つまり国際的な比較では、日本の学力が有意に低下していることを示すものはありません。

 ただし、読解力については明確に順位、点数ともに下がっていますので、これに関しては対策が必要です。

 しかし、この二つの調査で、日本の教育の抱える極めて大きな問題が浮き彫りになってきました。

 国際数学・理科教育動向調査( TIMSS2003 )によると「希望の職業に就くために数学でよい成績を取る」という質問に対して「そう思う」と答えた生徒は、日本では47%と調査に参加した四十六カ国中四十五位、「希望の職業に就くために理科でよい成績を取る」という質問に「そう思う」と答えた生徒はわずか39%でやはり四十五位。

 OECD学習到達度調査( PISA2003 )でも「将来の仕事の可能性を広げてくれるから数学は学びがいがある」という問いに「そう思う」と答えた日本の生徒は、43%と各国平均78%を大幅に下回ります。

 つまり、日本では教育を受けている生徒の多数が、学んでいることが自分の将来につながっている、自分の将来のためになっていると思っていないのです。一体自分は何のために勉強をしているのかわかっていない、勉強しろ、学校へ行けといわれているから学校へとりあえず行っているという生徒が多いのです。そしてそうした状況が、勉強することが楽しいか、勉強を積極的にするか、勉強に自信があるかといった問いに対しても否定的に答える生徒の数が圧倒的に多いということにつながっていきます。(「数学を勉強することが楽しいと思う」日本39%、各国平均65%、「数学を勉強することに対して積極性がある」日本17%、各国平均55%、「数学の勉強に対して自信がある」日本17%、各国平均40%)

  自分の受けている教育が自分の将来につながっていく、自分の将来の可能性を広げることにつながっていくという意識を子供たちにきちんと持たせる教育改革が必要ではないでしょうか。

 

ウィンドウを閉じる