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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第28号 河野太郎の改革案

 

 

現在の日本の年金制度は国民全てを対象とする国民年金とサラリーマンならば厚生年金、公務員ならば共済年金の二本立てになっています。

 まず基礎年金ともいわれる国民年金は、全ての国民の老後を保障するものですから、全ての国民が確実に対象とならなければなりません。しかし、現実には年金保険料を支払わない未納者がいて、その人たちは六十五歳になっても国民年金の給付を受けることができません。しかし、保険料未納のため国民年金の給付を受けられない人を政府はほったらかしにすることはできませんから、そういう人には生活保護を支給することになります。自分の年金保険料を支払わない人のために税金が使われてしまうのです。こうしたことを防ぐためにも国民年金は本来、国が強制力を持って徴収できる税金を財源として、国民全てをもれなく対象とするべきなのです。

 河野太郎の年金改革案は、国民年金を保険料ではなく7%の消費税を財源として運営していきます。

 消費税方式の優れた点は、買い物をするたびに消費税が必ず支払われるわけですから、保険料方式と違って未納の問題が起こりません。六十五歳になっても国民年金をもらえない人はいなくなります。

 次に、消費税で運営される国民年金の場合は、年金保険料を徴収する必要がありませんから、社会保険庁という徴収組織を廃止することができます。社会保険庁という組織を維持するためにかかっている人件費や経費を国民年金に回すことができます。今の社会保険庁は、年金保険料を徴収するためにわざわざ莫大なコストをかけていますが、こうした税金の無駄遣いもなくなります。

 毎月約7万円の現在の国民年金を消費税でまかなうためには8%の消費税が必要になります。しかし、六十五歳になってもある程度の収入がある人には国民年金の給付を留保することも可能です。六十五歳になっても年間五百万円以上の収入のある人に対する国民年金の支給は停止することにすれば、消費税率は7%になります。

 国民年金の支給額を引き上げようとするならば消費税率を上げることになります。負担と給付の関係が誰の目にもはっきりわかります。「財政再建」とか「プライマリーバランス」などというかけ声のために消費税が上がるよりも年金の支給額で消費税率が変わるほうが国民の理解を得ることができるのではないでしょうか。

 さらにサラリーマンを対象とする厚生年金の問題も深刻です。

 今の厚生年金は賦課方式と呼ばれ、その年に支払われた厚生年金保険料でその年の厚生年金の給付がまかなわれています。つまり、現役世代が支払う厚生年金保険料が引退した世代の厚生年金として支払われています。この制度は人口が増えている社会では良い制度です。しかし、今の日本社会は人口が減っています。

少子高齢化で、六十五歳以上の高齢者の割合が増え、現役世代の数、割合が共に減っていく中でこれまでのような賦課方式の厚生年金制度を維持していこうとすれば、厚生年金の給付額を減らしていくか、次世代の支払う厚生年金保険料を増額し続けるか以外に方法がありません。そんな年金をあなたは信頼できますか。そんな年金制度に入って保険料を支払い続けようと思いますか。厚生労働省の年金局は、年金の支給開始年齢を六十五歳から七十歳に引き上げることも将来の選択肢の一つとして考えているようですが、そんなことをすればますます厚生年金に対する信頼は失われていきます。

 日本の一億二千七百万人の人口は西暦二千五十年、つまり今の大学三年生が定年を迎える頃には一億人を割り込み、その時には日本の人口の実に三人に一人が六十五歳以上の高齢者、つまり年金をもらう側になります。

 厚生労働省は、将来的に日本の出生率は1 . 39より下がらないと勝手に決めて年金の計算をしています。しかし、もうすでに日本の出生率は1 . 25まで落ちています。どんなに大胆な出生率向上政策を導入しても、すぐに人口減少の流れは変わりません。

 結論から言えば、現在のように世代間で年金を負担する厚生年金は維持することができないのです。

 少子高齢化、そして人口減少が進む今日の日本社会に対応するために、財源を次の世代に依存しない積立方式、つまり自分が働いている間に年収の一定金額を年金口座に積み立て、退職するときにその年金口座の積立を原資として年金を支払う方式に切り替えなければなりません。

 例えば二十歳で働きはじめるとすると、二十歳から六十五歳まで毎年年収の9%を年金口座に積み立てていきます。もちろん積立は運用され、利息が上乗せされていきます。あなたが一生を通じて、厚生労働省の統計による日本人として平均的な収入を得たと仮定して、四十五年間の平均金利を3%とすると、六十五歳で引退するときに4670万円を積み立てることができます。それを六十五歳の日本人男性の平均余命17 . 4歳で割った金額268万円(月額22万3千円)があなたの年金になります。

 もちろんあなたが平均余命より長生きしても年金は終身支払われます。その代わり、もしあなたが平均余命よりも早く亡くなっても子供が年金を相続することはできません。夫婦の場合はそれぞれ年金を受け取るか、夫婦の平均金額を二人とも亡くなるまで受け取ることができます。

 積立方式の厚生年金のもう一つのメリットは、現在の厚生年金と違って職業を問わず、全ての日本国民が加入できることです。

 積立方式の年金に移行するためには、現在厚生年金の給付を受けている者の財源を国債等で手当てする必要があります。そのことを懸念する意見もありますが、少子化で維持不可能な現在の賦課方式の制度にしがみついているよりは、はるかに賢く現実的な選択です。

 厚生年金と同じように賦課方式で運営されている公務員の共済年金には、毎年二兆円近い税金が投入されています。そのため共済年金は保険料に比べ年金額の割合が高く維持されてきました。厚生年金を国民全体が対象とする積立方式に変更すると、共済年金もそれに統合されますから、追加費用もなくなります。

 これが私の年金改革案です。

 今回は河野さんは難しいよね、という人が多いのも承知しています。でも、いつか、必ず改革を実現していきたいと思います。

 

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