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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第22号 『腹を切ればよいのか』

「腹を切ればよいのか」

 今度の衆議院議長の身体の中には自前の肝臓がありません。あのお腹に入っているのは私の肝臓の一部だったものです。

 親父は相当昔からC型肝炎でした。私が中学校一年生の一学期の生物の中間テストを受けた日、より一般的には若き日の河野洋平が自民党を離党して新自由クラブを作った日、にはもう親父は肝臓が結構悪いということがわかっていました。たぶんそれ以前に受けた手術の輸血が原因だったと思います。C型肝炎は放置しておくと慢性肝炎になり、やがてそれはかなりの確率で肝硬変に進みます。親父も「強力ミノファーゲン」の注射をずいぶんと長い間定期的に受けたり、インターフェロン治療を受けたりもしましたが、治癒にいたりませんでした。

 親父の体調に人一倍気を遣っていた母が八年前に亡くなると、病状も進み、小渕内閣の外務大臣を受けたことが決定的な要因になり一気に肝炎が悪化しました。2001年の後半には、かなりひどい肝硬変になり(「おい、君の親父さん、身体の具体が悪いんじゃないか、なんか顔色が黒いぞ」「いや、日焼けです」)、肝臓で処理しきれないアンモニアが原因で肝性脳症を起こすようになりました。この年の大晦日の年越しそばには油っ気はだめだということでとうとう天ぷらも入れることができず、年明けに黒くひからびた状態で入院しました。程なく医者からあと半年程度という宣言がなされ、私も葬式は小田原でやるか東京でやるかを考えるようにまでなりました。

 最後の手段は肝臓移植しかありませんでした。しかし、日本では臓器移植法が制定されてからも、脳死からの臓器提供を受けての肝臓移植はまだ二十件程度しかありませんでした。確実に移植を実現するためには、脳死からではなく生きている人間の肝臓を切ってやるしか方法はありません。そのために私が肝臓を提供して生体肝移植を行うことになりました。

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