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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第20号 『異議があります!』

反対しない与党

 政党に属している以上、党の方針に従うのはあたりまえではないか、党の方針に反対するならば配置換えされてもしかたがないとおっしゃるかもしれません。しかし、それは違います。

 日本やイギリスのような議院内閣制、つまり多数党のリーダーが首相になり、首相が大臣を任命する制度では、大臣をはじめ副大臣や政務官といった政府の役職に就いている議員は、必ず政府提案の法案には賛成しなければなりません。議院内閣制の下では、政府・内閣は、内部では議論があっても、対外的には一体となって政策を遂行するというのが原則ですから、対外的に政府の公式見解と違った発言をすることはできません。閣僚などが政府の政策に反対するためには、その職を辞任することが必要です。

 しかし、政府の役職に就いていない議員は、たとえ与党議員であっても、政府の立場に縛られることはありません。政府は行政府であり、議会は立法府ですから、三権分立の原則から言っても、議員の立場、意見が政府と違ってくることはあり得るのです。

 例えば、今回の米イラク戦争に際して、イギリスはアメリカ側で参戦するかどうかを議会で採決しました。トニー・ブレア首相は、アメリカ支持でしたが、閣僚の中にはその立場に反対する者もいて、採決に反対するために数名が閣僚を辞任しました。最終的に賛成412票、反対149票で採択されましたが、与党労働党からは100票近い反対票が投じられました。さらに、政府の方針に反対する動議に対し、与党から140票にも上る賛成票がありました。もし、政府提出の動議が否決されていれば、ブレア内閣は総辞職することになったはずです。

 韓国でも韓国軍をイラクに派遣するかどうかの国会採決では、与党新千年民主党から造反が相次ぎ、与党議員の内訳は賛成49票、反対43票でした。結果的には、賛成多数で、派兵が決まりました。

 日本の政治報道では、「政府与党」という言葉がよく使われ、まるで与党は政府と一体でなければならないかのように言われますが、これは日本独特のことです。日本では、大臣がしょっちゅう替わるため、派閥のボスが内閣に入らず、自民党の中から、派閥を通じて大きな影響力を行使することがよくあります。政府の政策といえども、与党のドンも一緒になって決めたことなので、幹事長をはじめ自民党幹部は政府の役職に就いていない自民党の議員が造反などしないように締め付けるのです。ですから、日本の政界には「政府与党」などという言葉があり、自民党の議員は誰でも、いつも政府の政策に賛成するのがあたりまえのように思っているのですが、そんな馬鹿なことはありません。自民党議員であっても、それは違うと思ったら、それは違うと言うべきなのです。

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