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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第20号 『異議があります!』

異議があります

 大相撲を見ていると、次の力士を土俵に呼び上げていく「呼び出し」の良く通る声が、取り組みの合間に響き渡ります。実は、衆議院にも「呼び出し」といわれる役職があります。衆議院の本会議に動議を提出する役目の議員のことを「呼び出し」とよびます。主に自民党の当選二回生で、主流派の元気のある議員が任命され、朗々とした声で「ぎっちょーーーーっ」と叫び、動議を提出します。この「呼び出し」をやると出世するといわれ、竹下登、海部俊樹、羽田孜、森喜朗といった総理経験者や加藤紘一、古賀誠等幹事長経験者も若い頃、これをやっています。声の大きさ、通りの良さだけならば、私が今の二回生の中でも最適任だと思うのですが、「呼び出し」は、執行部の言うことに絶対服従しなければならず...。

 つい先日、今国会の呼び出しを務める下村博文代議士が、「ぎっちょーーーーっ」。綿貫議長が「しもむらはくぶんくーん」。「議案追加の緊急動議を提出します。XXXを議題として取り上げることを望みます」「下村博文君提出の動議を議題とすることにご異議ございませんか」

 普通は、ここで誰かが異議なしと叫び、動議が取り上げられるのですが、このとき私は、この議題を議論することに反対していたものですから、右手を挙げて立ち上がり、呼び出しの声の大きさの少なくとも二倍の声で「異議があります」と叫びました。他からも同様に「異議ありー」と声がかかりました。すると綿貫議長は、一瞬ぐっと詰まり、「ご異議なしと認めます」

 本会議場内は騒然となりました。「ご異議ありませんか」と諮っておいて異議があるにもかかわらず、ご異議なしと認めます??  与野党双方から「異議があるぞ」とヤジが飛び、私はもう一度「異議があります」と叫びましたが、議長は全て無視し、関連する委員会の委員長に、登壇して報告するよう求めました。

 衆議院の本会議にはシナリオがあって、議長はそのシナリオを読み上げていけば議事がスムーズに進むようになっています。しかし、そのシナリオ通りに行かなかった時に上手く采配をふるうのが議長の仕事のはずですが、シナリオと「現実」が食い違った時に、シナリオが優先され「現実」は起きていないものとして処理されているのが、国会の現実です。異議の出ないはずのところで異議が出たことで、議院運営委員会や国会対策委員会の幹部は、根回しが足りなかったと譴責されたそうです。

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