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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第19号 『再び不良債権入門』

単純銀行

 不良債権は、銀行の問題ですから、まず「単純銀行」という銀行を設立しましょう。単純銀行には、自己資本(株主が出した資本金とこれまでの利益の積み立て)が20万円あります。銀行ですから、当然預金をあちこちから180万円集めました。これで、単純銀行は200万円の資金を集めることができました。

 集めたお金を運用して利息を稼ぐのが、銀行業です。単純銀行は、集めた200万円を全額いろいろな企業に融資します。これをわかりやすく表にしたものが(図1)です。右側の箱には、単純銀行がどうやってお金を集めたかが書いてあり、左側の箱には集めたお金をどうしたかを書いてあります。

注意:預金者が預金を引き出しに来たときに、払い戻しができるように、銀行の手元にはいつも十分な現金がありますが、ここでは、それを無視しています。

  さて、ここで事件です。単純銀行がお金を貸した企業の一つが経営不振に陥りました。この企業に貸したお金の返済が滞る可能性があります(もし、借りた企業が約束どおりの返済や利息の支払いをできなくなれば、銀行からみてその融資は不良債権です)。この企業には土地を担保に10万円を貸したのですが、土地の値段が下がったため、今、担保を処分しても確実に回収できるものは5万円しかありません。 もし、貸したお金が返ってこないと、預金者に預金を返せないことにもなりかねません。そこで、銀行は、危なそうな貸し出しがいくらあるかを明確にしておかなければなりません。

 単純銀行のケースでは、10万円の貸し出しが不良債権になりました。担保の価値が5万円ありますから、回収できなくなる可能性があるのは5万円です。そこで、5万円だけ、回収不能になる可能性があることを示さなくてはなりません。

 そこで、右側の箱に、貸倒引当金というものを計上します。(図2)この意味は、左側の箱の貸し出しの中の5万円が返ってこない可能性があり、その場合には右側の箱に計上したこの貸倒引当金と相殺しますよ、ということです。

 右側の箱の「預金」は、必ず預金者に払い戻さなくてはなりませんから、これに手をつけることはできません。銀行は、「自己資本」の中から貸倒引当金を計上しなければなりません。(貸倒引当金を「積む」とも言います)

 この単純銀行の場合は、自己資本20万円のうちの5万円を貸倒引当金として、右側の箱に計上します。つまり、単純銀行の右側の箱は、180万円の預金、5万円の貸倒引当金、そして15万円の自己資本ということになります。この時点で、左側の箱は、200万円の貸し出しのままです。このように貸倒引当金をきちんと計上することを間接償却といいます。

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