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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第16号 『与党の改革を』

「古賀誠」

 二年前の冬、僕はEUに招待されました。遺伝子組換え食品の問題で、日欧で共同歩調をとれるかどうか意見交換しようと、EU委員会やEU議会の関係者との会談がセットされていました。しかし、出発直前に、臨時国会が召集されました。会期中の海外出張は、国対(国会対策委員会)の了承が必要です。しかし、実務を仕切る国対の副委員長は、天皇陛下が出席される国会の開会式に、一回生が欠席するなんて認められないの一点張りでした。確かに開会式は重要です。しかし、遺伝子組換えの表示問題を解決するためには、この出張はどうしても必要だと考えた僕は、無謀にも、当時の古賀誠国対委員長に直訴しました。

 古賀国対委員長は、会談相手の氏名と肩書きを書いたリストには目もくれず、「それでこの出張はそんなに大事なのですか」「はい」「それなら行かれたらどうですか」「開会式を欠席してもよろしいのですか」「飛行場で腹痛が起きて、飛行機に乗れず帰国できなかったら仕方ないでしょう」。

 帰国後、副委員長に、国対の控え室で一時間にわたり、怒鳴られました。古賀委員長が、通りかかり、一瞬こっちを見て、ウィンクして、そのまま立ち去りました。

 その古賀誠が、幹事長になり、執行部の真ん中にでんと座りました。

 今回の総裁選挙の最大の争点は、党員票をどう扱うかということでした。自民党の総裁選挙は、毎回、ルールが変更されます。その時々に、権力者が自分に都合が良くなるようにルールを変えてきたのです。今回、執行部は、各県ごとに三票づつ、合計百四十一票を主張しました。僕たちは、党員票をもっと増やせと主張し、小選挙区ごとに設置されている自民党の選挙区支部ごとに一票を割り当て、合計三百票という提案をまとめました。

 総裁選挙のルールは、両院議員総会で決定されます。通常は、執行部が案を提示し、それがそのまま承認されます。森喜郎総裁が選任されたときは、むちゃくちゃで、当時の野中幹事長が、「今日の会議で発言できるのは、昨日までに発言を書類で提出したものだけだ」って、いきなり今日そう言って、昨日が期限じゃ誰も発言できるわけがありません。

 僕は、党則や両院議員総会のルールを調べ、古賀誠幹事長のところに事前に行って、執行部案に対し、党員票三百という修正案を提出しますので、きちんと議論し、採決してほしいと根回しをしました。古賀幹事長に、採決の結果にはちゃんと従うのかと聞かれたので、もちろんです、僕は民主主義者ですからと答え、修正案の提出を認め、採決を行う、そして、その結果には全員がきちんと従うということで合意しました。

 両院議員総会の当日、党本部の会場に一時間前に乗り込みました。仲間の中には、もめたときに演壇を占拠できるように、最前列にみんなで座ろうという者もいましたが、他ならぬ古賀幹事長と話が付いているからそれは必要ないと、発言用マイクに近い席を押さえました。

 予定通り「ぎっちょーーう」「河野太郎君」「修正案を提出します…」。ところがどっこい敵はしたたかでした。約束はあっさりとほごにされ、修正案は採決もなく、「執行部の提案を了承するにご異議ございませんか」「いぎありーーっ」「ご異議なしと認めます」って、なんでだよ。古賀さんと約束ができているからと、演壇占拠やそのほかの実力行使の何の準備もしていなかった我々は、あっさりと蹴散らされ、敗北したのでありました。

 党本部の幹事長室に頭から湯気を出して飛び込んだ僕に向かって、古賀幹事長は、「そんなに執行部を追いつめるなよ」。ああ、きっと修正案の採決なんてとんでもないという圧力がどこかからあったんだろうなあと思いながら、頭だけ下げて失礼しました。

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