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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第15号 『本音の構造改革』

特定財源

 税金の中には、その税収を特定の目的にしか使ってはいけないとされているものがあります。たとえば、揮発油税、石油ガス税、自動車重量税の税収は、道路をつくるためにしか使ってはいけないことになります。この三税の合計は、約三兆五千億円、国の一般会計予算の約四%にあたります。地方税の中でも、地方道路税、石油ガス譲与税、軽油引取税、自動車重量譲与税、自動車取得税の五税はやはり道路特定財源で、合計約六兆円、地方公共団体の財政の約七%をしめています。

 公共事業の中でも道路整備の予算シェアは常に三〇%と、最大の項目になっていて、第二位の下水道のシェア一八%を大きく引き離しています。公共事業の長期計画の中でも、平成十四年までの五年間に七十八兆円の道路事業費が計画され、十四年間で四十一兆円の土地改良や七年間で二十四兆円の治水、七年間で二十三兆七千億円の下水道と比べてもダントツの大きさです。

 この道路特定財源には、いくつかの問題があります。まず、国と地方の予算の四ー七%にもあたる金額の使途が固定化されることは、財政の硬直化を招きます。国にとって、あるいは地方にとって本当に道路を造ることが最優先なのか、教育や福祉にもっとお金を回すべきだ、いや国債、地方債の償還をする必要があるといった議論ができなくなっています。

 必要に応じてではなく、税金の額に応じて道路予算が決まるということは、きわめて効率の悪い事業でも、予算を消化するためにやらなければならなくなります。首都圏などでは用地の手当に時間がかかるため、当該年度の予算消化のために、用地買収が簡単な、しかし、必要性のない地方の道路を造ることになったりして、経済的な効果、効率は大きく落ち込みます。

 さらに大きな問題は、この特定財源が、国と地方の関係を大きくゆがめていることです。道路特定財源を改廃して、一般財源にしようという考え方は根強くありますし、政府税調でも毎年のように議論されています。この道路特定財源が無くなって一番困るのは、もちろん建設省です。道路特定財源の廃止論が出るたびに、建設省は、国からの補助金の分配をアメとムチに使って、地方の県庁から、その県選出の国会議員に対して、道路特定財源廃止に絶対反対の陳情をするように命令します。県庁は、建設省からのいろいろな補助金に影響が出るといけないので、建設省から命令されると、幹部が大挙して上京して、議員会館や自民党本部を走り回ることになります。もちろん、そのときの知事や局長さんの飛行機代は、県の予算から出ることになります。高知県などは、県のホームページにこの道路特定財源が廃止されそうだという新聞記事を載せて、政府税調あてに県民が廃止反対の手紙を書くように求めています。

 道路特定財源などは速やかに廃止し、一般財源にすべきです。そして、一般財源の中で、道路が必要だというならば、必要に応じて予算を確保していけばよいのです。

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