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給付か減税か
2025.06.25
賃上げを物価が上回り、実質賃金が減少しています。
物価高対策として消費税の軽減税率の引き下げなどを訴える声があります。
中には軽減税率を一旦引き下げ、一年間で元に戻すなどという案も出ています。
しかし、消費税の引き下げは、消費の多い、つまり収入の多い世帯にとって優遇が大きくなり、物価高対策としては公平な政策とは言えません。
また、消費税の税率変更には手間がかかります。
今日決めて、来週や来月に税率が変更できるわけではありません。
軽減税率を変更する場合に限っても大変です。
値札の張替えと小売店のレジの変更だけではありません。
商品の売れ行きなどの情報を分析するためのPOSレジを使用しているコンビニ、ドラッグストア、スーパー、デパート等では、それぞれの企業が独自に構築しているシステムの変更が必要です。
さらに軽減税率を伴う商品の商取引をする企業の受発注システムや会計、支払いのシステムにも変更が必要になります。
食料品は、店内で消費すると10%、テイクアウトだと8%ですが、大手のチェーン店の中にはこの2%差を飲み込んで税込価格を統一している場合もあります。
しかし、仮に軽減税率が0%になると、標準税率10%との差が大きくなり、値段設定を分ける事が必要になってくるでしょう。
また、イートインが10%、テイクアウトが0%となると、コンビニなどの店頭での確認を、今まで以上に丁寧にする必要が出てきます。
10%が適用されるレストランなどの外食と、0%のコンビニ、スーパーのお惣菜やお弁当との税率差が大きくなり、外食産業への影響も出るでしょう。
税率引き下げが決まると、飲料品やレトルト、缶詰など保存のできる加工食品の買い控えが発生します。
軽減税率を元に戻すときには、引き上げ前の買いだめとその反動による売上減が続きます。
軽減税率を0%とすると、原材料を標準税率(10%)で仕入れて、商品を軽減税率(0%)で販売する事業者は、仕入れ時に支払う消費税が変わらない一方、売上げ時に消費税を受け取れず、仕入れ時に支払った消費税は、消費税を申告して還付を受けるまで回収することができないため、資金繰りに影響が出てきます。
こうしたことを考えると、消費税の軽減税率を一時的に引き下げるというのは、足元の物価高対策にならず、また、短期的に税率を二度、変更する手間とコストを考えると、現実的な政策の選択肢たり得ないと思います。
ちなみに消費税率を3%から5%に引き上げたときは引き上げの法律改正が公布されてから引き上げまで28ヶ月、5%から8%に引き上げたときは19ヶ月かけています。
物価高対策をするためには、減税よりも給付のほうが早く、低コストで支援を実現することができます。
給付ならば、参議院選挙後の臨時国会で必要な補正予算が成立すれば、速やかに公金受取口座を使って給付を行うことができます。
公金受取口座を登録した人に対しては、これまでのように市区町村をわずらわすことなく給付金が振り込まれます。
公金受取口座は生年月日を参照することができますから、子どもへの給付も同様にできます。
もちろん、今、公金受取口座を登録していない方も、マイナポータル経由で、あるいはマイナンバーつきの住民票と身分証明書を持って、口座をお持ちの金融機関経由で、公金受取口座の登録をすることができます。
今回を皮切りに、今後、災害などで給付が必要になった場合は、同じ手法で早く低コストで給付をすることができます。
本来、足許の物価高対策ならば、必要な世帯にピンポイントで給付すべきですが、今の我が国で政府が持っている所得の情報は、前年の確定申告の情報だけで、リアルタイムに支援が必要な世帯を抜き出すことができません。
必要な世帯にピンポイントに支援するためには、「河野太郎総理で実現したい-4 デジタルセーフティネット」に書いたようなデジタルセーフティネットを確立することが必要です。
( 河野太郎総理で実現したい-4 デジタルセーフティネット | 衆議院議員 河野太郎公式サイト )
それがまだ実現していない今日、必要な世帯を抜き出すことができませんから、すべての世帯に一律に給付することにはなってしまいます。
今後の課題として、真に支援を必要としている人を把握するためのデジタルセーフティネットをつくりあげれば、早く、低コストで、必要な方に、必要な支援をすることができるようになります。
デジタル技術を活用してみなさまの便利と行政の効率化の実現を目指していきます。