社会保障改革2025 年金問題を解説する-1 現行の年金制度

2025.03.02

日本の年金制度と年金制度が直面する問題を解説します。

 

社会保障を実現する方法には、「保険」と「福祉」があります。

保険は保険料の支払いに基づいて、個々に権利が発生します。

福祉は税を財源に行なわれますが、税の支払いによって個人に給付を受ける権利が発生することはなく、必要に応じて給付が行なわれます。

若い世代を中心に、NISAやiDeCoを念頭に、自ら将来のために積み立てをすることで公的年金は不要になるのではないかという声があります。

しかし、私的な積み立てでは長寿のリスク、つまり自分が何歳まで生きるかわからないため、積み立ての必要額が定まらない、怠惰のリスク、自分で積み立てをするつもりだったけれど先延ばししてしまって老後に必要な額を確保できないといったリスクに対応できません。

国が関与する公的年金によって、何歳まで長生きしても亡くなるまで年金が保障され、拠出が強制されることで誰もが年金の対象となることができます。

だから公的年金が必要です。

だからこそ、その公的年金は国民に信頼され、納得されるものではなければなりません。

現在の年金制度は、残念ながら、若い世代に信頼されているとは言えないのでしょか。

もっとわかりやすく、納得のいく制度への改革が必要です。

年金の財政方式には賦課方式と積立方式があります。

賦課方式は、次の世代の拠出が前の世代の年金に充てられます。

積立方式では将来の年金の原資を若いときから自ら積み立てていきます。

賦課方式は、人口構成がピラミッド型の時は年金の原資を拠出する次の世代の人数が前の世代よりも多くなるため、財政的に安定しますが、人口構成が逆ピラミッド型になると、拠出を増やすか受給を減らす必要があります。

我が国の年金制度は、三つに分かれています。

国民年金には、非正規雇用の被用者、自営業者、農家、学生、無職の人が第一号被保険者として加入し、月額16,980円の年金保険料を負担することで、満額で月額68,000円の基礎年金を受給します。

厚生年金には、会社員、公務員が第二号被保険者として加入し、標準報酬の18.3%を、被保険者と企業が折半して負担し、基礎年金と報酬比例年金の合計額で、標準世帯と呼ばれるケースでは夫婦で月に230,000円余を受給します。

第二号被保険者の配偶者で年収130万円以下であれば、第三号被保険者として自らは保険料の負担なく、満額68,000円の基礎年金を受け取ります。

国民年金の第一号被保険者、第三号被保険者は、基礎年金を受け取ります。

厚生年金に加入する第二号被保険者は基礎年金に加えて、報酬比例年金を受給します。

年金エクセル (エクセルシート)

国民年金と厚生年金は、被保険者が支払った保険料と国庫負担(基礎年金の二分の一)から、加入者の数に応じて基礎年金勘定に拠出し、基礎年金を支給するための財源とします。

1985年までは、収入のない専業主婦は年金制度への加入は任意とされ、拠出原則は徹底されていましたが、国民「皆」年金ではありませんでした。

1986年に、国民皆年金を目指し、専業主婦のために第三号被保険者制度が創設され、国民皆年金に近づきましたが、拠出原則は崩れました。

厚生年金の保険料には、報酬比例年金分の保険料、第二号被保険者の基礎年金拠出金の二分の一相当に加えて、保険料負担のない第三号被保険者の基礎年金拠出金の二分の一相当額を第二号被保険者で分担した金額が含まれます。

第三号被保険者となった専業主婦の保険料を単身世帯や働く女性も分担して負担していることになります。

仮に、第三号被保険者制度が廃止されると、厚生年金保険料は引き下げられることになります。

「年金制度は破綻しないのか」という質問を受けることがありますが、年金制度自体は破綻しないように運営されるので、破綻しません。

しかし、「年金制度」が破綻しないことと「年金生活」が破綻しないことは別な話です。

人口構成が逆ピラミッドの社会では、年金制度を維持するために、年金保険料を上げていくか、年金額を下げていくか、いずれかが必要になります。

少子高齢化によって、賦課方式の年金保険料が上がり続けたため、2004年の年金改革で、厚生年金と国民年金それぞれの年金保険料の上限を固定することにしました。

そのため、年金制度を維持していくために、マクロ経済スライドを導入し、年金額を徐々に減らしていくことになりました。

そのため、年金額は減少し、現役時代の所得と年金を比較した所得代替率も低下していきます。



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