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社会保障改革2025 年金制度の抜本改革を議論しよう
2025.03.13
現在の年金制度は破綻しないのかと問われれば、破綻はしないでしょう。
それはなぜかといえば、破綻しないように運営するからです。
しかし、賦課方式の年金制度を現在のような少子高齢化の日本で続けようとすれば、保険料負担を増やす、年金支給額を減らす、税を引き上げて国庫負担を増やすのいずれかしか方法はありません。
2004年の年金改革で保険料の上限を決めてしまったので保険料を引き上げるわけにはいきません。
また、国庫負担を増やすための増税といえば消費税の引き上げになり、政治的に難しいでしょう。
だからマクロ経済スライドを導入して年金の支給額を減らしていくことにしたのです。
少子高齢化が進むことにより、年金財政が悪化し、年金の支給額が仮に月に一万円ということになっても、ルール通りに年金の額が決められ、その通りに支払われていたら、年金制度は破綻していないことになります。
しかし、年金制度が破綻しないということと、年金生活が破綻しないかどうかは別な話です。
今、議論が必要なのは年金制度が破綻しないかではなく、年金生活が破綻しないかどうかです。
そのためには、少子高齢化で賦課方式を続けていくのかどうかをまず議論しなければなりません。
少子高齢化の時代に将来の年金額を維持できるのは、それぞれが若いうちから自らの年金の原資を積み立てていく、積立方式であることは明確です。
しかし、賦課方式から積立方式に切り替えて、現役世代が自分のために積み立てを始めると、現在の年金受給者とこれから年金を受け取る者に現在の制度のなかで約束した分の年金の原資がなくなってしまいます。
これが「二重の負担」と呼ばれる問題で、だから今更、年金を積立方式に変更することはできないという主張が出てきます。
しかし、だからといって現在の制度を維持すれば、年金額はどんどん減っていくだけです。
若者世代にはそれがわかっているから、年金に対する期待や信頼が薄くなるのです。
また、保険料方式の基礎年金では、保険料を免除される、猶予される、未納にするものが必ず出て、その分の基礎年金が減額されてしまうため、最低保障年金の役割を果たすことができません。
そして、満額の基礎年金が生活保護を下回る現状では、年金保険料を未納にして、いざというときは生活保護を頼ればよいという考えが魅力的に見えてしまいかねません。
老後の生活の最低保障をしようと思えば、保険料方式の基礎年金ではできないのです。
現役世代、特に若者は、現在の年金制度に期待していませんし、そもそも、制度が複雑すぎて理解できません。
現役世代に理解され、信頼される年金制度への抜本改革が必要です。
年金制度の改革は、最低保障年金の役割を果たす税を財源とする一階部分と報酬比例年金の役割を果たす積立方式の二階部分、それに希望する個人が自分で加入する三階部分ということになるでしょう。
現在の賦課方式から、いかに積立方式に切り替えていくか、「二重の負担」の財源問題をどうやって解決していくのか、そこが議論の争点になります。
ここは厚労省、霞が関では答えは出せませんし、出すべきではありません。
これは政治の仕事です。
2004年の年金改革を含め、これまでの「年金改革」は、政治が決断をせず、基本的な少子高齢化への対応を先送りし、限られた選択肢のなかで厚労省が微調整を積み重ねてきたものです。
だから私は、今回、厚労省が用意したきわめてテクニカルな微調整を進めるのではなく、政治が責任をもって国民に信頼される年金制度をつくるべきだと主張し続けてきました。
100年先を見据えてやらなければならない年金制度の抜本改革は、政争の材料にせず、与野党が知恵を絞って結論を出し、与野党で国民に説明し理解を求めることをやるべきだと思います。
厚労省が用意した年金改正法案をどうするのかではなく、年金制度をどうするかを与野党できっちり議論しましょう。