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社会保障改革2025-4 第3号被保険者問題
2025.01.28
「年収の壁」を無くすのであれば、いまの第3号被保険者制度の廃止が必要です。
ただし、この制度を前提に人生設計をしてきた方もいますから、決定から廃止まで一定期間をおき、廃止の際にすでに一定以上の年齢になっている人にはこの制度を維持することは当然です。さらには、現在ある産前産後の保険料免除のみならず、例えば、ご自身の健康状態、障害をお持ちのお子さんの子育て、親御さんの介護などで働きに出られない人への配慮も欠かせません。
「収入の壁」は、所得税というよりも社会保険料によるものです。
年金の第2号被保険者(厚生年金)の配偶者が、第3号被保険者として、年金保険料を負担することなく、満額の基礎年金をもらうことができるという制度がこの壁を作ってしまっています。
第3号被保険者という制度を維持する限り、壁は必ず残ります。
この制度は、サラリーマンの妻が専業主婦であるという前提で約40年前に作られたもので、今でも年金制度でいう「標準世帯」はサラリーマンの夫と一定収入以下の専業主婦の妻、2人の子どもとなっています。
専業主婦(夫)である第3号被保険者が保険料の負担なしで基礎年金をもらうことができるのは、単身世帯や共働き世帯も含め、すべての第2号被保険者が第3号被保険者の保険料を負担しているからです。
人口が減少し人手不足が広がる日本では、働かないインセンティブになってしまう制度は改革が必要です。
ただし、この制度を前提として人生設計をしてきた方もいるわけですから、決定から実際の廃止まで、一定期間をおくことが必要です。
また、決定の時期にすでに一定の年齢(例えば40歳)になっている人は対象外とすることも必要でしょう。
ご自身の健康状態、障害をお持ちのお子さんの子育て、親御さんの介護などで働きに出られない人への配慮も欠かせません。
そうした措置を入れた上で第3号被保険者制度を廃止し、働く人は厚生年金、そうでない人は国民年金の保険料を負担し、将来、その年金を受け取るようにすべきです。
収入を得たら、極端にいえばそれが月1万円であろうとも、いったんは定率の保険料を負担することとします。
もっとも、所得税のように収入から差し引ける控除もなく、累進税率でもない保険料は、とりわけ低所得層に重くなります。
そこで、勤労税額控除(給付付き税額控除)を導入すれば、そうした層にマイナスの税金、つまり給付が適用されるようになり、負担感を和らげることができます。
しかし、残念ながら審議会における議論は活発とはいえません。
厚労省年金局が第7回社会保障審議会年金部会(2023年9月21日)に提出した資料を見てください。
「賃金水準(1人あたり)が同じであれば、どの世帯類型でも1人あたりの年金額は同じ。」とあります。
しかし、「夫のみ就労の世帯」では夫の賃金は40万円ですが、夫婦共働き世帯の1人の賃金や単身世帯の賃金は半分の20万円です。
なぜそうなるのでしょうか。
どちらの世帯でも1人の賃金が同じ40万円だったら年金の1人分は同じではありません。
そもそも第3号被保険者の問題は、世帯の受け取る厚生年金の金額が同じかどうかよりも、負担をしていない第3号被保険者が国民年金をもらえることが負担の公平性を欠いていることにあります。
これは万人の納得できる説明でしょうか。
現在の年金制度を公平、公正、健全、そして信頼されるものにしていかなければなりません。