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ごまめの歯ぎしり ハードコピー版

第31号 これまでの外国人政策

これまでの日本の外国人労働者の受け入れ政策は、お上品に言えば「本音と建前が乖離している」、普通の日本語で言えば、ほとんどイカサマです。

日本の外国人労働者の受け入れ政策の基本は、「いわゆる単純労働者は外国から受け入れない」ということになっています。「大卒以上または実務経験十年以上を持つ外国人労働者」を技術的、専門的分野の外国人と位置付け、ここにあてはまる者は日本に受け入れています。

そして、「この大卒以上または実務経験十年以上の者」以外が、全て「いわゆる単純労働者」に分類されます(「単純労働者」の定義が無いため、「いわゆる単純労働者」とよぶ)。

ところが現実にはこの「いわゆる単純労働者」(これ以後「単純労働者」)のカテゴリーにあてはまる外国人労働者が国内にたくさんいます。まず、日系人。平成元年に、日本人の血を引く日系人は三世およびその扶養者までは無条件で定住ビザをもらえるという入管法の改正が行われました。日本人の血が流れているからなどという理屈をつけていますが、当時、外国からの単純労働者は入れないという大方針を変えないまま、バブル期の労働者不足を解消しようとして、外国からの労働者(しかも日本人より低賃金)を入れるための裏口をつくったのです。

この結果、南米から日系人が多数来日しましたが、彼らの多くは日系でも日本語もわからず、日本社会に溶け込めずに特定の地域に集住するようになりました。

しかも、親と一緒に来日した子供に関しては、文部科学省が外国人の子供は義務教育の対象ではないなどというものですから、国にも地方にも責任を持って教育を受けさせる体制がありません。浜松市では、ポルトガル語しかできない子供を市立小学校に入れるために、ポルトガル語のできる職員の人件費をはじめ、年間に一億数千万円の費用を市が負担しています。

せっかく希望を持って来日した日系人なのに、親は仕事上の不安を抱え、教育を受けられない子供たちは明るい将来を描けないという状況で暮らしている人が少なくありません。

さらに、技能研修なるイカサマがまかりとおっています(法務副大臣時代に法務省も共管している技能研修制度をイカサマと呼んだものですから、大騒ぎになりました。でもそれまで誰も手をつけられなかったこの制度を、副大臣があれはイカサマだと言ったので、ようやく改革が始まりました)。

発展途上国からきた研修生に技能訓練をして、本国でその技能を活用した職についてもらうという制度のはずだったのですが、単純労働者は入れないという方針を変えずに低賃金労働者を外国から入れるための隠れみのとして使われてきました。研修生は研修をしていて、労働をしていないという建前なので、労働基準法も適用されず、賃金ではなく安い手当を支払うだけでよかったのです。

例えば中国から来る研修生の場合、多くは三年間きちっとおつとめをしますという誓約書を書かされ、中国人にとっては巨額の保証金を、借金をして積んでから来日します。三年間きちんとおつとめしなければ巨額の保証金は没収されてしまうので、来日したらどんな劣悪な条件の下でも我慢して研修(!)することになるのです。

日系人や技能研修生といういわば裏口から入った単純労働者が国内に多数いるにもかかわらず、単純労働者は受け入れていませんという建前があるので、官庁は見ないふりをしてきました。現実には外国人の集住地区のある自治体は大きな問題を抱え、低賃金労働を強いられる研修生は社会保障の対象にもならずに、日本語のできない日系人は日本社会に入ることもできずに、子供は学校にも行かれずに...。でも、あたかもそんなことはないように官庁は振る舞ってきたのです。

 

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